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鳩館弥右衛門、残されて・いい話?

2009年05月29日 00:11

52 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/05/28(木) 19:56:17 ID:lrYBDX8b
大阪の陣において、信州松本藩初代、小笠原秀政が、長男・忠脩と討ち死にした時、
彼の近習10人のうち、9人は皆、秀政と同じ場所で討ち死にした。
ただ、鳩館弥右衛門一人が、その時他の場所にいたため、生き残った。

戦後、その領地松本において、秀政親子の死から百日目に、追善が行われることとなった。
その九十九日目にあたる日、弥右衛門は妻に、「明日は舅の所で、精進落ちをするといい。
お前は今から、子を連れて舅の所に行きなさい。」そう言って、家を出した。

実家に帰った妻は、夫の言う事を不審に思い父に相談した。するとその父は、あわてて
弥右衛門宅に向かった。

「娘から話は聞きました。弥右衛門殿、あなたは悪しき覚悟をなさっているのではないですか?
十人の内一人生き残ったからといって、それは卑怯な振る舞いをしてそうなったわけではない。
その事でもし、何か至らぬことを考えているのであれば、それは返って不覚悟と申すものだと
拙者は考える。それをあなたに言いに来たのです。」

弥右衛門はこれを聞き、さにあらぬ体で
「なにをおっしゃるかと思えば、私はそのような事、一向に考えておりませんよ。
妻はそちらで、どうしてそんな事を申し上げたのやら。
そのような心にもない事、世間に聞こえれば、返って我々の
大きな恥とも傷ともなってしまうじゃないですか?」

そんな風に言うし、また、主君の死から百日もたって、その後を追う事もあるまいと思ったので、
舅も安心して帰宅した。

翌日、弥右衛門は寺において、主君、秀政の追い腹を切って、死んだ。

そこには書置きが残っていた。

『このたび大阪で、殿様に御昵懇に召し使われた十人の内、九人まで、乱戦の中
殿の御前で討ち死にされました。

私は他所で働いていたため、一人生き残りました。
この口惜しさ、これに過ぎるものはありません。
早速にも追い腹を斬ろう、そう思いました。

しかしよく考えてみると、行きがかりの討ち死になれば、それで良いのでしょうが、
生き残った私には、殿より仰せ付かった役儀上の仕事が残っています。
これを残して逝くことは忠義ではない、残らず終えてから殿の後を追おう。そう考えました。

そうして今、全ての仕事を終えました。思い残す事何も無くなった故、今日、殿のお供をいたします。』

秀政の近習がみな、高い忠誠心を持っていたのは、若い頃、小姓として使えていた彼らを、
容貌ではなく、その心根が正しい事を持って寵愛したからだ、と言われる。

余談だが、残された弥右衛門の子は成人すると、小笠原家の家老となり、後、病死。
その子もまた、小笠原家に仕えた。


一人残された男のお話。





53 名前:人間七七四年[] 投稿日:2009/05/28(木) 23:30:25 ID:2pIxbxyn
切ない…(;_;)

57 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/05/29(金) 00:05:24 ID:yFj16U4l
>>52
しかし本当に皆良く、死にたがるのな・・・
それが武士の潔さと言っちゃえばそうなんだろうがこのメンタリティーは何処から来たんだろう
正直今の日本人と同じ民族とは思えないよ

58 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/05/29(金) 00:18:35 ID:/54IwGke
成人するまでに半分以上が死ぬ時代だからねえ
それでなくても野良犬よりも死体の方が街中では珍しくないような社会情勢なんだろうし

59 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/05/29(金) 00:33:15 ID:pPHza6ze
戦乱の世といっても戦場以外は結構平和なんだけどな
戦国時代100年余で人口も2.3割増えてるくらい平和

60 名前:人間七七四年[] 投稿日:2009/05/29(金) 00:44:56 ID:P9E6QVrV
戦では100人くらい死んだら大敗北だし…。
一部の撫で斬りなんかを除けばそんな民衆に被害が出てるとも思わない。
民衆殺せば後が圧倒的に恐ろしい。
忠義忠義って騒ぐのは旗本か一部の階級のみ。
戦場でも雇われや農民は決死で戦うかと言えばそうでもないし。
戦傷で死ぬ人は多かったかもね。


61 名前:人間七七四年[] 投稿日:2009/05/29(金) 01:03:39 ID:wEDAU3qA
落ち武者狩りで農民が兵隊をぶっ殺してたりもしたしな。

62 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/05/29(金) 01:14:56 ID:dlvqFiEj
まあ殿と近習が自分以外みんな死んだらおめおめ一人生きてられないだろう
自分一人生き残って幸せだったのか未だにわからないってのは太平洋戦争の生存者も言う言葉だしな

63 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/05/29(金) 02:36:14 ID:phY7wZRX
生き残った、じゃなくって
生き残ってしまった、なんだよな…


64 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/05/29(金) 05:01:13 ID:7ciZBH5z
牟田口廉也の名前は出すなよ荒れるから

65 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/05/29(金) 07:20:32 ID:ecvKJIfN
>>62
震災やこないだのJRの事故とかの災害後でも少なからずそういう人が出るから
どうも周りが死んでいく中生き残った事が辛いってのは人間として珍しくないメンタリティーらしい
武士があっさり死にたがるのもそこら辺があるのかもしれない

66 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/05/29(金) 07:43:43 ID:0sc77biG
後、子孫や一族のためもあるな
戦で討ち死にしたり追い腹切ったりしたら
その子供は目をかけられるから

67 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/05/29(金) 08:10:41 ID:7zt0vvW8
>>64
牟田口は別に荒れないだろ。
思想を問わず全会一致でダメ将校なんだから。
本当に荒れるのは外国に直接関わる話。

むしろスレに関係無いから自粛すべきというのが言うべきこと。

68 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/05/29(金) 10:56:28 ID:/54IwGke
>>58-59
戦場で死なないからって平和に生きていられる時代じゃないでしょ

普通に生きていても、飢えて死ぬし怪我したら衛生状態の悪さで
簡単に悪化して死ぬ、ただの風邪でもコロリと死ぬ。
まして戦国時代は社会基盤も脆いし、自然環境も室町以来ずっと
寒冷に傾いてるから食料生産力も落ちてる。
勿論小児死亡率の高さは言うまでもない。江戸時代ですら半分が生き残れるレベルじゃなかったか。
現代の成人年齢の20になる頃には顔見知りの同世代は半分死んでるわけだ。
20くらいとなると親も40近くとか過ぎとかだからこれも普通に死んでる可能性が高い。

戦国でなくても近代以前の人類はこんな環境で生きてきたんだ、
人命に価値があるという思想が個人に生まれるのは
難しいだろう。


69 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/05/29(金) 11:53:39 ID:qvpqMlVG
コロコロ死ぬから長生きしたお祝いとかあるとも言えるんじゃね

70 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/05/29(金) 13:42:37 ID:JgECr1ri
道元とか法然とかもそうなんだけど
若年にして自ら発心して仏道に入る人が多いのも
人があっさり死ぬからなんだよな


71 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/05/29(金) 14:22:20 ID:i45g/QnM
というか、仏教教祖の釈迦の発心理由がそれだしな

72 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/05/29(金) 14:50:14 ID:zWzKERkw
生き残るのが難しかったからこそ優秀な人材が尊ばれ
生きることに価値が見いだされた側面もあったと思う。
ただ死は日常に溢れていて、覚悟するのはさほど難しくなかったろう。

73 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/05/29(金) 17:56:16 ID:ROEE8q/Y
(身内の)肉体は滅んでも、その心、魂だけは残り続けて欲しいという願望もあったから、
信心深い人が多かったのかも知れない。

74 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/05/29(金) 18:12:25 ID:JgECr1ri
そういえば茶道の一期一会の考え方とか
「この度の出会いの後は再び会うこともないかもしれない
だから一席の茶会に心を尽くしもてなしをしよう」
っていう非常に死を意識した思想なんだよな
茶道が武士の間に流行したのもいつ死ぬともしれない生活の中で
習慣的に「末期の水」ならぬ「末期の茶」をやっておいて
ある日来る死を儀式化する側面があったんジャマイカとどっかで聞いた
メメント・モリってやつかね

75 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/05/29(金) 18:27:16 ID:v7sCyWaG
高虎「朝起きたら、今日が死ぬ日だと思っておくもんだよ」


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