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相部次郎右衛門の幻術

2009年09月25日 00:01

708 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/24(木) 19:38:55 ID:K2pSn0ts
越後国本庄の領主、村上頼勝の家臣に相部次郎右衛門と言う者がいた。
この男、武士としてよりも、何故か幻術の達人として有名であった。

ある夜、この次郎右衛門の自宅に、悪友2,3人が集まり軒端で色々と物語などしていた折、
この次郎右衛門ふと空を見上げ、ぽつりと言った。

「今夜は見事な銀河が見られるな。あの銀河に泳ぐ鮎を食いたいものだ。」

友人達はこれを面白がり、

「そんな事、どうやってするというのだ」

と、げらげら笑った。しかし次郎右衛門

「よろしい、では今宵のもてなしに、銀河の鮎を獲ってくるとしよう。」

そう言うと下僕を呼び、細引縄を幾筋も持ってこさせ、その縄をみな結びつけると
庭に降り、繋ぎ合わせた細引縄の端を取って空に向かって投げ上げた。

するとその縄、不思議なことに竿のように立ち、どんどんと空へ上っていった。
次郎右衛門はその縄の末に取り付き、共に空へと上がった。

友人たちは、あまりに奇異の事に驚いて空を見上げたが、空高くに上にあがったせいか
次郎右衛門の姿も良く見えなかった。

そのうちしばらくするとだんだんと降りてきて、その姿がわかるほどになった。
そして地上に降りると、袂から、生きた見事な鮎を2,30も取り出し。これを料理して友人達に
饗応した。

このような不思議なことが度々あったので、主君、村上頼勝も「彼の幻術を見物したい」と、
次郎右衛門を御前に呼び出した。

そこで次郎右衛門、「失礼いたす」と立ち上がり、鼻紙を取り出すとそれを裂き、
大豆ほどの大きさにしたものを柱に貼り付けて、また元の座に戻った。

しかし何が起きるというわけでもなく、頼勝はじめこの座にいた者達も、「なあんだ」と
少々残念な面持ち。

ところがしばらくして、柱に貼った鼻紙から、少しばかり水が染み出していることに
皆が気づいた。

村上頼勝をはじめ近習の者達、「何事か仕掛けやあらん」と、目を離さずそれを見つめていたが、
徐々に鼻紙より出る水量は増え、しまいには滝のように噴出し、その座はことごとく水に浸かった。

頼勝もこれにはたまらず叫ぶ

「もうよい!術を止めよ!」

即座に次郎右衛門すくりと座を立ち、柱の鼻紙をはがすとその瞬間、水は消え去った。
その座も、元の乾いたままであった、とのことである。


主君も狼狽させた、相部次郎右衛門の幻術、のお話。




713 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/24(木) 21:55:05 ID:zVgG2Htl
>>708
普通の家中の士なんだよな・・次郎右衛門
本物の幻術使い顔負けの術はどこで仕込んだのやら

714 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/24(木) 21:56:21 ID:R+1dhuZw
中の人が果心居士だったんじゃねえの?

736 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/25(金) 09:39:18 ID:hLJplzR/
>>708
これは面白いな。縄上りの奇術はインド発生で、中国まで伝わったとされるけど、
日本にも伝わってたんだな。


739 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/09/25(金) 12:56:06 ID:hAg1oxPF
聊斎志異にも縄登りの奇術の話が出て来るから遅くても明末清初には中国に伝わってるのは確実。
戦国時代の日本に伝わっててもおかしくないな。


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