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成田さんと龍神の加護

2010年04月23日 00:07

495 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 13:28:13 ID:tcJ6PIlZ
武州成田氏の菩提寺、龍渕寺。
これを建立したのは成田家時であった。

家時はある夜、館から彷徨い出て、阿弥陀堂に辿り着く夢を見た。
不思議に思った家時、家臣に夢の地を訪れさせると、まさしく夢の通りの場所に阿
弥陀堂があり、そこで一人の僧侶が修行をしていた。
この僧侶を和庵和尚と言い、不思議な縁であるとして、成田家に招いた。

成田家では丁度新しく寺を建て、菩提寺としようとしていたので、この和庵和尚に
その住職となるコトを依頼した。
すると和庵は
「この地に寺を建てていただきたい」
と言う。その指定するところは古くから龍神が住むとされた龍ヶ渕と言う沼であっ
た。

沼にどうやって寺を建てるのか。成田家中では頭を悩ませ、和庵和尚による遠回し
な拒絶なのではないか、とも囁かれた。
すると和尚、龍ヶ渕の湖畔に一人座禅を始める。
座禅を始めてから七日目。和尚の夢の中に白髪の老人が現れ、
「私に菩薩戒を授けてくださるなら、この土地をお譲りしよう」
と言う。

翌朝、和尚が引き続き座禅をしていると、突如猛烈な突風が吹き荒れる。
和尚は慌てて叫んだ。
「オイオイ、お前がそのまま来たら皆が驚くじゃないか。里の皆を驚かせないよう
に、もう少し小さな姿で出てきておくれ!」
すると風と波はたちどころに収まり、水中からは小さな蛇が一匹、ニョロリと姿を
覗かせた。

眼を合わせたまま動かない蛇を見て、和尚が頭を撫で、我が弟子として戒を授けて
やると、蛇は再び大人しく水中に帰って行った。
その日から武蔵北部は突然の大雨に見舞われ、あちこちで洪水が起こったのだが、
何故か龍ヶ渕の水は雨の量に従って徐々に干上がっていくように見えた。
やがて完全に陸地になった龍ヶ渕に建てられた成田氏の菩提寺を龍淵寺と名付けた
という。

龍淵寺建立から程なく、下忍の三千坊沼という沼で、夜毎鯨が鳴く様な声がすると
いう噂が立った。
里人が和庵和尚に相談すると、和尚は沼を訪れ、鯨声のする辺りでお経を上げ始め
る。
すると、和尚の目の前に大きな鐘が浮かび上がって来た。

この鐘、龍の化身であるとされ、和尚によって仏弟子となった龍ヶ渕の龍が、和尚
の徳を慕って寺を護る為に鐘と変じて現れたのだと噂された。
その鐘は龍淵寺に運ばれ、寺宝として大切にされていたという。
ここまで室町初期頃のお話。

やがて時代は下り戦国時代。
繰り返し行われた上杉謙信の忍城攻撃。
何度目かの忍城攻撃の際、謙信率いる上州兵によって龍淵寺も略奪を受けてしまう。
「龍の化身」として名高かった寺宝の鐘もこの時に略奪され、上州に持ち去られて
しまった……かと思われた。
が、利根川を渡河中、突如として鐘を積んだ船が転覆。兵も積荷も諸共に川底に沈
んでしまった。
龍は末法の世を嘆きながら、利根川を下り、龍宮に帰って行ったと言う。

龍神の加護を失った成田家は、次代の氏長の時に武蔵を追われるコトとなった。
負けても負けても滅びないと思ったら、龍神の加護があったんだね、という
成田さんのお話。




496 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/04/22(木) 15:28:47 ID:mNzuIOPW
負けても滅びなかったのは竜神のおかげというより、甲斐姫のおかげという現実・・・
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コメント

  1. 人間七七四年 | URL | -

    負けても負けても滅びなかった小田さんには一体どんな物凄いものが憑いていたんだろうw

  2. 人間七七四年 | URL | -

    ぉぃぉぃ竜神、
    途中で投げ出すなよ

  3. 人間七七四年 | URL | -

    「まったく、ウチの亭主を見習いなさい。」
    by 黒姫

  4. 人間七七四年 | URL | mQop/nM.

    ちっちゃいお目目で和尚さんをじっと見つめて
    撫で撫でしてもらうと大人しく帰っていく蛇。
    カワユスvv

  5. 人間七七四年 | URL | -

    >米1
    ちなみに龍神は龍淵寺に不祥(略奪の事?)があった際、寺を去って「筑波山」に移住した。との話もあるようです。
    謙信の忍攻撃は長泰の頃……その時に筑波に移住して、小田vs三楽斎で小田を加護……

    時代的にはあってる!?

  6. 人間七七四年 | URL | -

    小田さんには百太郎並の守護霊がついてたんやな…

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