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『鬼』の風化

2010年06月27日 00:00

森長可   
580 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/06/26(土) 13:28:42 ID:UPakxgY5
男が尾張岩作の安昌寺を参拝したついでに、池田恒興の供養塚を見に行くと、畑の外れに塚が立っていた。

「勝入(恒興)が討ち死にしたのは、畑の中に陣取っていた時じゃなかったのかね?」
男は近くにいた百姓に聞いたが、
「へぇ、確かにその向かいの畑ン中でしたが、そこに塚なんぞ立てても、わしらの収入が減っちまうんでね。
そんなこと言ってたら、後の世の人間が『当時は、そんな細かいこと気にしてたのか』って笑いますぜ。」

まさかと思った男が森長可の供養塚に向かうと、案の定これも実際の死に場所から五、六反(約11m)離れている。
男は、これについても百姓に問い質した。
「確かに長可公の遺体が、ここに落ちてたんで立てたんですがねぇ・・・」

「いや、長可が眉間を撃たれて落馬した時、家臣が遺体をかついで逃げたんだ。そこに本多八蔵が追いついて、
置き去りにされた遺体から首を取ったのさ。だから、実際に死んだのは五、六反ほども向こうだよ。
オレは、それを見たんだから。」
「お侍さん、面白ぇこと言うなあ!」百姓たちは、男の言葉に笑った。



笑い事では、なかった。

男の名は、丹羽氏次。尾張岩崎城主である。長久手の戦いの時は、徳川軍の先鋒に加わり、城を留守にした。
主不在の城は池田軍に攻められ、留守部隊は良く守ったものの、森長可の突撃を受け、落城。
城を守っていた氏次の妻の兄・加藤忠景、実弟の氏重など留守部隊三百の兵は、長可に皆殺しにされた。

一族の仇、『鬼』と呼ばれ世を騒がせた男が風化して行く現場を見た氏次は、複雑な思いで長久手を去った。




581 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/06/26(土) 13:35:40 ID:d+CylV+5
そこは笑った百姓を皆殺しにしないと

582 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/06/26(土) 14:09:28 ID:Y43vLrVE
 

583 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/06/26(土) 20:21:08 ID:s+9sBRx2
武士の美学も、百姓の現実主義の前に打ち砕かれてしまうのであった…

584 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/06/26(土) 21:14:17 ID:qn+ejkgu
名誉もまた儚いものなんだなぁ

585 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/06/26(土) 21:46:52 ID:6jvVsr0G
超時空太閤H「露と落ち 露と消えにし なんとやら
      天下人となったわしの生涯でさえ夢のまた夢なのだから
      彼らのような者共の尚更じゃ」

586 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/06/26(土) 22:07:24 ID:0DfDK7C8
>>585
嬉やと 再び醒めて 一眠り 浮き世の夢は 暁の空
「まったく、夢のような一生でありましたな」

587 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/06/26(土) 22:16:46 ID:55XHXEAE
そしてさらばこの世

先に行く あとに残るも同じこと 連れて行けぬを別れぞと思う
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コメント

  1. 人間七七四年 | URL | -

    勝入塚と武蔵塚だったら今でも残ってるね

  2. 人間七七四年 | URL | -

    栄枯盛衰は平家物語にうたわれる以前から世の倣いだけど
    生きた証が薄れていくのを目の当たりにするこういう話ってのはやっぱ切ない

    そして相変わらず感想?レスの流れがいいなぁ
    珍しく笑い系じゃなくしんみり系だけどw

  3. 人間七七四年 | URL | -

    11メートルくらいで細けーと思ってしまった俺は・・・死ぬのか・・・
    当時でこれなら現代に残る「~地の碑」なんてどれだけズレてるかわからんな

  4. 人間七七四年 | URL | -

    地元農民からすればどうでもいい事だろうけど当事者の武士からすれば
    肉親を殺した人間が名を残すのがせめてもの救いだったんだろうね

    イチモツ大名の「父の首は五千石の価値しかござらぬか」みたいな感じ?

  5. 人間七七四年 | URL | -

    百姓にしてみれば、何処の誰が何処で死のうと関係無いからねぇ。
    やっぱり実体験での想いと、それを知らない人の差は中々埋まらんよね。
    でも、塚が残ってるだけ良いのでは?

  6. 人間七七四年 | URL | -

    まあ伍長閣下とか同志鉄の男みたいに全世界レベルで無双してさえ、数十年経てば昔の話になるからなぁ

  7. 人間七七四年 | URL | -

    当時は武士が戦場で討たれて「首を取られる」という事は、それこそ日常数多あったわけで。
    名はあっても歴史に埋もれてしまった武士や、果ては名もない雑兵輩なんぞは、合同の首塚や慰霊碑でさえあればまだ幸せな方なのか。

    討たれた当の本人にしてみれば「自分が死んだ後の事は知ったこっちゃないよww」なのか、あるいは後世、塚のようなものを建てたら「生きた証を建ててくれてありがてぇ」と思っているのか・・

    いずれにしても、人間の歴史の何とも儚く虚しい事よ。

  8. 人間七七四年 | URL | -

    個人的には昔の事柄を扱う逸話内で使う事に対して全く違和感抵抗感が無いのですが、今調べて見たら「百姓」って差別に入るらしいですね?
    TVでもうっかり発言してしまうと、訂正が入る様です。
    (但し「自称」もしくは接頭辞付きの「お百姓」の場合はセーフ)

    これは自分が言う分には良いけど、相手から言われると駄目との事。
    百姓が「農奴身分」だからだそうで。
    (最近は意識が緩くなって来たようですがね)

  9. 人間七七四年 | URL | -

    >百姓
    それ、ただの言葉狩りだからねぇ。
    百姓が『農奴的身分でないと困る』連中が騒いだという、きな臭い理由がある。
    実際は『おおみたから』と呼ばれるし、『天子から姓を戴いた』から百姓なわけだし。

  10. 人間七七四年 | URL | -

    信長の一代記である「信長公記」にはいくつかのバージョンがあって、あるバージョンだけ登場して活躍する武将がいたりする。
    その武士は作者の太田牛一に「頼むからワシが活躍する場面を書いてくれ」と頼んだそうな。
    本に武勇伝を残せば、逸話の石碑のように風化することはないからね。

  11. 人間七七四年 | URL | -

    武士の名誉すら・・

  12. 人間七七四年 | URL | -

    武蔵塚は住宅街の中に肩身が狭そうに建ってる。
    本当はサークルKがある辺りだったんだろうか。

  13. 人間七七四年 | URL | -

    まぁ弟が400年経っても知らない人の方が少ないくらい有名になった事を思えば、鬼と呼ばれた男も悲しいほどに埋もれたな。

  14. 人間七七四年 | URL | -

    >>※13
    「え゛?磔右近ってそんなに有名だっけ?」
    と思ったオレはこのブログに毒され過ぎてるな…

  15. 人間七七四年 | URL | -

    長可の弟で蘭丸じゃなくて先に忠政が思い浮かぶようなら間違いなく毒されてるなw

  16. 人間七七四年 | URL | Ct4zj71g

    ※15
    忠政ってそんなに有名だっけ?と素で思ってました。
    あぁ、蘭丸って鬼の弟だったんだね、そういえば。
    そして、「知らぬ者なき有名な弟」というフレーズで最初にイメージしたのは信州のお兄ちゃんでした。

  17. 人間七七四年 | URL | -

    俺も忠政が浮かんだw

  18. 人間七七四年 | URL | JalddpaA

    も、桃は邪気を払う毒にござる……

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