100 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 03:01:00 ID:kiDc5BxX
上州沼田の豪族に金子美濃守という人物がいる。
少し前の雑談、「ヘタレ武将」の中でも名前が挙がっていた人物ではあるが、実は
それなりの能力は持っていたらしい。
元々は沼田氏の配下だったのだが、娘(妹・姪という説も有)を当主の妾として、
沼田氏が北条派・上杉派で内紛を起こした際には北条派を粛清、娘の産んだ子を世
継に据える事に成功。
しかし真田氏が進出してくると、孫を捨てて真田に寝返る。あまつさえ由良氏の援
助を受けた孫が逆襲に転じると、内応したように見せかけて謀殺してのけるという、
戦には弱いが謀略・調略に才能を発揮した武将だったようで、真田家中でも沼田衆
のまとめ役を務めたようだ。
そんな金子美濃守、戦続きで乱れた世の中を憂い、平和を祈願する為に、上州の修
験道場として有名な湯殿山に参詣しようと志した。
湯殿山で修行する僧に道案内を頼み、知り合いでもあった海蔵寺の住職にも同行し
て貰い、湯殿山に登り始める。
しかし、不思議な事に御山に一歩足を踏み入れた途端、美濃守の手足は竦み、頭は
クラクラとして前後もわからないようになってしまった。
案内人達が美濃守に問う。
「これは御山が貴方の入山を拒んでいるのではないでしょうか。貴方は何か、懺悔
するべき大罪を犯されておりませぬか?」
「し、仕方がなかろう!わしとて重代の主君を殺したくなどなかった!しかもわし
に取っては孫に当たる若君だったのだぞ!それでも、殺さねばならなかったのだ!
金子の家を残す為だったのだ!!」
101 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 03:02:20 ID:kiDc5BxX
美濃守が、山伏達にそう言葉を返した途端、茂みの中から彼等の前に一匹の蛇が姿
を現した。
百尋もあろうかという巨大な大蛇であり、この大蛇は美濃守をジッと見据えたまま、
自らの腹を美濃守の目の前に晒した。
「…………平八郎様っ!!」
美濃守は騙し討ちにした孫の名を叫ぶと、その場に昏倒してしまう。
山伏達と海蔵寺の住職が大蛇を見ると、蛇の左の脇腹には痣のように見える模様が
あった。
生前の平八郎にも痣があったか、騙し討ちにした時に左脇を斬り付けたのか、美濃
守と平八郎にしか判らない何かがあったのだろう。
だが、この大蛇が平八郎の怨霊である事は確かだと、後に息を吹き返した美濃守自
身が語ったという。
山伏達&住職に担がれるように山を降りた金子美濃守。
海蔵寺の住職には
「平八郎様の霊を慰め、菩提を弔う為に出家されては如何だろうか?」
と提案されるがそれを拒否。
あくまで在家のままで平八郎の菩提を弔いたいと言って、湯殿山の参詣者達の為に
登山道の整備に私財を寄進したり、七度まで執拗に湯殿山参詣にチャレンジしたり
もしている。
だが、遂に美濃守が山頂にまでたどり着く事はなかったという。
この事があった後、美濃守の館では、日が暮れるたびに平八郎殿の霊が現れたと言
う。
沼田衆のまとめ役であった美濃守だが、配下の沼田衆の心も離れて行く。
この様子を見て真田昌幸・信幸父子も美濃守を見限ったのか、小田原征伐の後、関
東が静謐になると、美濃守の所領を替え、少しずつ減らして行った。
最後は自らの館もなく、縁者の元で病死して果てたと言う。
真田配下でのヘタレ敗戦の事ばかりが有名な金子さんですが、意外に謀略家だった
んですね。
出家を勧められて拒否する辺りは「戦国の武士として間違った事はしてない」とい
う矜持でも持っていたのでしょうか。
見方に寄ってはちょっと同情出来なくもない、金子美濃守と沼田平八郎の怨霊のお
話でした。
102 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 03:07:22 ID:4DsGlYKI
なるほど、平八郎のせいで結果的に信之お兄ちゃんの命が縮んだと
いうことですね
K○MATSU「私の父が何か」
103 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 10:31:32 ID:U8AHGvqt
良心の呵責ってのがあったんだろうか。
104 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 11:09:14 ID:MNMRktQ3
そもそも湯殿山に行かなければ良かったんじゃね?
105 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 11:26:21 ID:oL63smAx
真田某「あーしてこーして」
山伏達&住職「OKボス」
106 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 11:30:41 ID:vnp5y9Pn
>>105
そんなまわりくどいことをあの方がw
107 名前:100-101[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 13:25:21 ID:kiDc5BxX
先の逸話では省略してしまいましたが、出典元では海蔵寺の住職が出家を勧めた時、
「うちの寺は元々、上杉顕定が討死した時、主君を守れず、仇も討てなかった後悔
から、沼田景秀が建立した寺」と、寺の縁起を語り始めます。
自分は「主君の菩提を弔う為の」「沼田氏所縁の寺」の住職である、とまるで説得
というより難詰するかのような雰囲気です。
平八郎の霊が出るようになって、人も離れたと書かれていますし、昌幸の陰謀云々
よりも、真田家中の雰囲気が「……出家すればいいのに」という空気だったんじゃ
ないですかね。
本人からしてみたら仕方なくやった暗殺ではあったのだけれど、周りの人達は皆、
ドン引きしていた。ってな感じでしょうかw
上州沼田の豪族に金子美濃守という人物がいる。
少し前の雑談、「ヘタレ武将」の中でも名前が挙がっていた人物ではあるが、実は
それなりの能力は持っていたらしい。
元々は沼田氏の配下だったのだが、娘(妹・姪という説も有)を当主の妾として、
沼田氏が北条派・上杉派で内紛を起こした際には北条派を粛清、娘の産んだ子を世
継に据える事に成功。
しかし真田氏が進出してくると、孫を捨てて真田に寝返る。あまつさえ由良氏の援
助を受けた孫が逆襲に転じると、内応したように見せかけて謀殺してのけるという、
戦には弱いが謀略・調略に才能を発揮した武将だったようで、真田家中でも沼田衆
のまとめ役を務めたようだ。
そんな金子美濃守、戦続きで乱れた世の中を憂い、平和を祈願する為に、上州の修
験道場として有名な湯殿山に参詣しようと志した。
湯殿山で修行する僧に道案内を頼み、知り合いでもあった海蔵寺の住職にも同行し
て貰い、湯殿山に登り始める。
しかし、不思議な事に御山に一歩足を踏み入れた途端、美濃守の手足は竦み、頭は
クラクラとして前後もわからないようになってしまった。
案内人達が美濃守に問う。
「これは御山が貴方の入山を拒んでいるのではないでしょうか。貴方は何か、懺悔
するべき大罪を犯されておりませぬか?」
「し、仕方がなかろう!わしとて重代の主君を殺したくなどなかった!しかもわし
に取っては孫に当たる若君だったのだぞ!それでも、殺さねばならなかったのだ!
金子の家を残す為だったのだ!!」
101 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 03:02:20 ID:kiDc5BxX
美濃守が、山伏達にそう言葉を返した途端、茂みの中から彼等の前に一匹の蛇が姿
を現した。
百尋もあろうかという巨大な大蛇であり、この大蛇は美濃守をジッと見据えたまま、
自らの腹を美濃守の目の前に晒した。
「…………平八郎様っ!!」
美濃守は騙し討ちにした孫の名を叫ぶと、その場に昏倒してしまう。
山伏達と海蔵寺の住職が大蛇を見ると、蛇の左の脇腹には痣のように見える模様が
あった。
生前の平八郎にも痣があったか、騙し討ちにした時に左脇を斬り付けたのか、美濃
守と平八郎にしか判らない何かがあったのだろう。
だが、この大蛇が平八郎の怨霊である事は確かだと、後に息を吹き返した美濃守自
身が語ったという。
山伏達&住職に担がれるように山を降りた金子美濃守。
海蔵寺の住職には
「平八郎様の霊を慰め、菩提を弔う為に出家されては如何だろうか?」
と提案されるがそれを拒否。
あくまで在家のままで平八郎の菩提を弔いたいと言って、湯殿山の参詣者達の為に
登山道の整備に私財を寄進したり、七度まで執拗に湯殿山参詣にチャレンジしたり
もしている。
だが、遂に美濃守が山頂にまでたどり着く事はなかったという。
この事があった後、美濃守の館では、日が暮れるたびに平八郎殿の霊が現れたと言
う。
沼田衆のまとめ役であった美濃守だが、配下の沼田衆の心も離れて行く。
この様子を見て真田昌幸・信幸父子も美濃守を見限ったのか、小田原征伐の後、関
東が静謐になると、美濃守の所領を替え、少しずつ減らして行った。
最後は自らの館もなく、縁者の元で病死して果てたと言う。
真田配下でのヘタレ敗戦の事ばかりが有名な金子さんですが、意外に謀略家だった
んですね。
出家を勧められて拒否する辺りは「戦国の武士として間違った事はしてない」とい
う矜持でも持っていたのでしょうか。
見方に寄ってはちょっと同情出来なくもない、金子美濃守と沼田平八郎の怨霊のお
話でした。
102 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 03:07:22 ID:4DsGlYKI
なるほど、平八郎のせいで結果的に信之お兄ちゃんの命が縮んだと
いうことですね
K○MATSU「私の父が何か」
103 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 10:31:32 ID:U8AHGvqt
良心の呵責ってのがあったんだろうか。
104 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 11:09:14 ID:MNMRktQ3
そもそも湯殿山に行かなければ良かったんじゃね?
105 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 11:26:21 ID:oL63smAx
真田某「あーしてこーして」
山伏達&住職「OKボス」
106 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 11:30:41 ID:vnp5y9Pn
>>105
そんなまわりくどいことをあの方がw
107 名前:100-101[sage] 投稿日:2010/12/20(月) 13:25:21 ID:kiDc5BxX
先の逸話では省略してしまいましたが、出典元では海蔵寺の住職が出家を勧めた時、
「うちの寺は元々、上杉顕定が討死した時、主君を守れず、仇も討てなかった後悔
から、沼田景秀が建立した寺」と、寺の縁起を語り始めます。
自分は「主君の菩提を弔う為の」「沼田氏所縁の寺」の住職である、とまるで説得
というより難詰するかのような雰囲気です。
平八郎の霊が出るようになって、人も離れたと書かれていますし、昌幸の陰謀云々
よりも、真田家中の雰囲気が「……出家すればいいのに」という空気だったんじゃ
ないですかね。
本人からしてみたら仕方なくやった暗殺ではあったのだけれど、周りの人達は皆、
ドン引きしていた。ってな感じでしょうかw
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コメント
人間七七四年 | URL | -
上州の湯殿山ってどこ?
( 2010年12月21日 02:40 )
人間七七四年 | URL | IY7bLZJE
この人、やる夫信之の印象が強すぎて・・・
( 2010年12月21日 04:41 [Edit] )
人間七七四年 | URL | -
>1
高崎だよ。てか、それ位検索すれば出るってw
( 2010年12月21日 18:02 )
人間七七四年 | URL | -
>>2
おいやめろ。
金子美濃守がキモオタに脳内変換されるだろうが。
しかしこの人、謀略家の割には戦の時はなぜああも頭が回らないというか、脇の甘い行動しでかしてたんだろう。
( 2010年12月22日 00:41 )
人間七七四年 | URL | -
うん。この逸話のおかげでいままでヘタレ一辺倒だった美濃守YYYYYYィ のイメージが
平時は謀略もできるヘタレに変わったw
( 2010年12月22日 06:55 )
人間七七四年 | URL | -
平八郎のわき腹の痣に関しては、沼田氏代々のものという話があるよね。
沼田氏は三浦氏、大友氏、緒方氏、鎌倉氏説があって、本人たちは三浦氏を自称していたけど(会津の蘆名を頼ったのも同族だから)、実際三浦氏ではないらしい。
で、緒方氏の場合、緒方惟栄の後裔となるのだけど、緒方氏はそもそも蛇神の子孫という説があって、沼田氏初代も地元(三峰山)の蛇神の娘狭霧姫と惟栄の息子惟泰の息子という説がある。
んで代々沼田氏には蛇の鱗の痣があるっつー話。
( 2014年03月07日 20:19 )
人間七七四年 | URL | -
>>6
解説ありがたし。背景知らずに読んでたんで「何でいきなり蛇?」と思ってたけど
おかげで納得した。他の逸話もちとググってみますわ。
( 2014年04月07日 04:18 )
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