893 名前:1/2[sage] 投稿日:2011/09/13(火) 13:30:47.55 ID:ipR7QIQ0
大阪陣後、徳川大阪城の普請の折のことである。
黒田家は西宮で石垣に使う石を割らせ、これを浜から海上に搬出する作業をしていたのだが、
この時、吉田七左衛門という者の組が担当する石場と、黒田二十四騎にも数えられた村田出羽守吉次の組が
担当する石場から引き出された石が、丁度同じ道に入る入口で出会う形となった。
双方とも、その道まで5,6町(約5~600メートル)ほどになった所で、吉田七左衛門の組の石のほうが
少し先に進んでいるように見えた。と、この時村田出羽、使いを吉田方に遣わして言うには
『我々が石を先に通すので、貴殿の組の石はそれまで待っているように。』
こんな事を言われて吉田七左衛門、納得などできようものか
「これは近頃聞いたこともない使いだ!互いに引かせ、先に進んでいる方を先に通すのが当然である!
それを、待っているように、とは、全く理解出来ない使いである!」
だがしかし、この村田出羽、問題児の多い黒田家中でも札付きの問題児であった。彼は吉田の返答を聞くやいなや
ただ一人走り出て、七左衛門組の石の綱先一町(約100メートル)ほどの道の真ん中で、なんと寝転がってしまった!
この時吉田七左衛門とその組頭たちは後ろの方にいてこの事態に気がつかなかったが、先にいた
小頭たちは驚きすぐに走り寄って
「ここは石を引く道です!どうかお退き下さいませ!」と申し上げるも、それに返事もせずギロリとその方に
眼を向けるだけで動きもしない。しかし小頭たちも再三にわたって懇願する。それにも
「石を引いているなんて誰でも知っていることだ!オレを盲のように言うな!」
と聞き入れない。そうこうしているうちにも吉田七左衛門組の石はどんどん近づいてくる。
「石がもう、あんなに近くまで来ました!お怪我の心配もあります。どうか急いでここからお引き下がり下さい!」
それでも村田出羽
「ここは芝生が綺麗でな、それで寝たくなったから寝たんだよ。それを起こすとは推参な奴だ!」
と言って猶も起き上がらない。
この頃には吉田七左衛門も前方の状況に気がついていた。彼はそもそも性格もおとなしく冷静な人物なのだが、
村田出羽が寝っ転がっているのを見てさすがに頭に血が上った
「憎き所業かな!起き上がらないというのなら、私が起こしてやろう!」
と、走りだそうとする所を吉田組の組頭の者たち
「これは一体何という事ですか!あのキチガイとゴタゴタを起こすなんて、御主君のためにも良くないことです!
(是はいかなる事にて候ぞ、例の気違に御取合ひ候事、主君の御為め、旁以て然るべからず候)
きっと村田様も何か誤解をされているのでしょう。私たちが意見して来ます!」
894 名前:2/2[sage] 投稿日:2011/09/13(火) 13:31:32.31 ID:ipR7QIQ0
そうして6人の組頭のうち2人が吉田七左衛門を抑えつけ、4人が村田出羽のところに駆けつけた!
「村田様、これは沙汰の限りです!御身に似合わぬ所業ではありませんか!
それに石も近づいてきています。どうか急ぎ起き上がって下さい!」と叱りつけたが狸寝入りして返事もしない。
それでも押し返し押し返し申し上げれば村田出羽
「うるさいなあ。それならこの出羽の上を引いていき。オレを殺せ」
説得している組頭たちもこの時代の武士である。これを聞いて皆『うわ、こいつの頭轢き潰してえ』とは思ったが
(物頭共も心底きつき者共なれば、頭を切割りたくは思へども)
『変に大騒ぎにしちゃいけないよなあ』と考えなおす。吉田七左衛門の所に戻って彼をなだめ、
「とにかくここは、あんな気違い相手には変に手出ししないのが最善です」と笑いながら言うが、吉田七左衛門は
納得しない。彼は本当に怒っている
「ええい!急いで石を進ませろ!進ませれば起き上がるに決まってる!
だいたいあんな奴に礼儀正しく接しようとするから、付け上がってこんな慮外を働くんだ!
急いで引け!!」
この下知を受けた組頭たち、「心得候」と返事したもののわざと急がず、しばらくモタモタしているうちに
村田出羽組の石の方が先に進み、吉田組の石の先に行く勢となった。
これを見極めた村田出羽、やわら起き上がると「ふぁ~あ」と大あくび、そして
「ここの芝生はとても綺麗だから昼寝をしていたのに、わめきちらす連中が無理に起こそうとするから
寝ることも出来やしない。しょうがないからもう起きるか。」
そう言って何事もなかったかのように自分の組の石の方に戻っていった。
この事は当然問題になり、村田出羽は黒田家の年寄衆に呼びつけられ叱られたが、村田は
「私は少しも悪意があってあんなことをしたのではありません。毎日の仕事に草臥れたので、
あそこで寝ていただけなのです。七郎左衛門が腹を立てているのなら、いかようにも謝りますので
どうか良きようにしてください。」と、抜け抜けというので、年寄衆も絶句して、かえって笑い出した。
その後吉田七左衛門を呼んで意見を聞けば
「あの村田出羽の慮外の働きは今に始まったことではありません。彼の被害にあったものは
私一人ではないのです。ですが、殿様がそれを許すとおっしゃるのであれば、家臣として
この事にこれ以上こだわりません。」と神妙に申し上げた、実に分別家である。
ただ、吉田七左衛門はこのような分別家に見えて心の中は猛々しく、なにかおかしなことが
起こらないようにと、組頭の者たちが暫くは日夜、彼の行動に気をつけていた。
しかしこれでは埒があかないと組頭が年寄衆に泣きつき、吉田に重々意見をしてもらったので、
この件では何事も、起こることはなかったそうだ。
組頭の皆さんも、最後までご苦労様なお話である。
(古郷物語)
895 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2011/09/13(火) 14:13:12.60 ID:e+HuxKfg
黒田の面々はやっぱおかしい
吉田さんは災難だったね…
896 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2011/09/13(火) 14:26:40.46 ID:jpb6mjx7
石垣普請の逸話ってこんなのばっかりだなw
どこもしょっちゅう喧嘩してる
902 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2011/09/13(火) 19:59:08.28 ID:/9LP5Rq5
村田出羽が黒田家の朱槍朱具足か
キチガイって言われるほどじゃなければ認められないものだったのかな
904 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 09:33:07.03 ID:er70wXAS
吉田七左衛門は、吉田壱岐長利の息子の又助こと吉田重成ですな
最初の妻が後藤又兵衛の妹だったり、後妻が毛利秀包の娘だったり、
長政四男の付家老だったり、島原の乱の傷が元で亡くなったりした吉田重成ですね
905 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 19:31:35.38 ID:k/3N0HH4
なら敷き殺しても問題なかったんじゃね
その前に逆切れされて殺し合いになりそうだけど
つーか俺の中で村田出羽のイメージが
ヒャッハーとかギャハハとか跳刀地背拳とかになりつつある
906 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 19:46:36.98 ID:qvRybJjs
村田出羽って若き日の井口兵助でしょ
出奔騒ぎ起こしたこともあるし、このくらいは想定の範囲内かも
907 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 20:08:36.13 ID:6od0IFry
ttp://blog.goo.ne.jp/kuroda-bushi/e/4cc65b95a65d1e11a4d7f74adae8a132
908 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 20:30:37.45 ID:jv5yxqhl
>大坂城天守台の石垣普請の命を受け難なく普請の奉行を勤めた。
・・・難なく?
日本語って難しいなw
大阪陣後、徳川大阪城の普請の折のことである。
黒田家は西宮で石垣に使う石を割らせ、これを浜から海上に搬出する作業をしていたのだが、
この時、吉田七左衛門という者の組が担当する石場と、黒田二十四騎にも数えられた村田出羽守吉次の組が
担当する石場から引き出された石が、丁度同じ道に入る入口で出会う形となった。
双方とも、その道まで5,6町(約5~600メートル)ほどになった所で、吉田七左衛門の組の石のほうが
少し先に進んでいるように見えた。と、この時村田出羽、使いを吉田方に遣わして言うには
『我々が石を先に通すので、貴殿の組の石はそれまで待っているように。』
こんな事を言われて吉田七左衛門、納得などできようものか
「これは近頃聞いたこともない使いだ!互いに引かせ、先に進んでいる方を先に通すのが当然である!
それを、待っているように、とは、全く理解出来ない使いである!」
だがしかし、この村田出羽、問題児の多い黒田家中でも札付きの問題児であった。彼は吉田の返答を聞くやいなや
ただ一人走り出て、七左衛門組の石の綱先一町(約100メートル)ほどの道の真ん中で、なんと寝転がってしまった!
この時吉田七左衛門とその組頭たちは後ろの方にいてこの事態に気がつかなかったが、先にいた
小頭たちは驚きすぐに走り寄って
「ここは石を引く道です!どうかお退き下さいませ!」と申し上げるも、それに返事もせずギロリとその方に
眼を向けるだけで動きもしない。しかし小頭たちも再三にわたって懇願する。それにも
「石を引いているなんて誰でも知っていることだ!オレを盲のように言うな!」
と聞き入れない。そうこうしているうちにも吉田七左衛門組の石はどんどん近づいてくる。
「石がもう、あんなに近くまで来ました!お怪我の心配もあります。どうか急いでここからお引き下がり下さい!」
それでも村田出羽
「ここは芝生が綺麗でな、それで寝たくなったから寝たんだよ。それを起こすとは推参な奴だ!」
と言って猶も起き上がらない。
この頃には吉田七左衛門も前方の状況に気がついていた。彼はそもそも性格もおとなしく冷静な人物なのだが、
村田出羽が寝っ転がっているのを見てさすがに頭に血が上った
「憎き所業かな!起き上がらないというのなら、私が起こしてやろう!」
と、走りだそうとする所を吉田組の組頭の者たち
「これは一体何という事ですか!あのキチガイとゴタゴタを起こすなんて、御主君のためにも良くないことです!
(是はいかなる事にて候ぞ、例の気違に御取合ひ候事、主君の御為め、旁以て然るべからず候)
きっと村田様も何か誤解をされているのでしょう。私たちが意見して来ます!」
894 名前:2/2[sage] 投稿日:2011/09/13(火) 13:31:32.31 ID:ipR7QIQ0
そうして6人の組頭のうち2人が吉田七左衛門を抑えつけ、4人が村田出羽のところに駆けつけた!
「村田様、これは沙汰の限りです!御身に似合わぬ所業ではありませんか!
それに石も近づいてきています。どうか急ぎ起き上がって下さい!」と叱りつけたが狸寝入りして返事もしない。
それでも押し返し押し返し申し上げれば村田出羽
「うるさいなあ。それならこの出羽の上を引いていき。オレを殺せ」
説得している組頭たちもこの時代の武士である。これを聞いて皆『うわ、こいつの頭轢き潰してえ』とは思ったが
(物頭共も心底きつき者共なれば、頭を切割りたくは思へども)
『変に大騒ぎにしちゃいけないよなあ』と考えなおす。吉田七左衛門の所に戻って彼をなだめ、
「とにかくここは、あんな気違い相手には変に手出ししないのが最善です」と笑いながら言うが、吉田七左衛門は
納得しない。彼は本当に怒っている
「ええい!急いで石を進ませろ!進ませれば起き上がるに決まってる!
だいたいあんな奴に礼儀正しく接しようとするから、付け上がってこんな慮外を働くんだ!
急いで引け!!」
この下知を受けた組頭たち、「心得候」と返事したもののわざと急がず、しばらくモタモタしているうちに
村田出羽組の石の方が先に進み、吉田組の石の先に行く勢となった。
これを見極めた村田出羽、やわら起き上がると「ふぁ~あ」と大あくび、そして
「ここの芝生はとても綺麗だから昼寝をしていたのに、わめきちらす連中が無理に起こそうとするから
寝ることも出来やしない。しょうがないからもう起きるか。」
そう言って何事もなかったかのように自分の組の石の方に戻っていった。
この事は当然問題になり、村田出羽は黒田家の年寄衆に呼びつけられ叱られたが、村田は
「私は少しも悪意があってあんなことをしたのではありません。毎日の仕事に草臥れたので、
あそこで寝ていただけなのです。七郎左衛門が腹を立てているのなら、いかようにも謝りますので
どうか良きようにしてください。」と、抜け抜けというので、年寄衆も絶句して、かえって笑い出した。
その後吉田七左衛門を呼んで意見を聞けば
「あの村田出羽の慮外の働きは今に始まったことではありません。彼の被害にあったものは
私一人ではないのです。ですが、殿様がそれを許すとおっしゃるのであれば、家臣として
この事にこれ以上こだわりません。」と神妙に申し上げた、実に分別家である。
ただ、吉田七左衛門はこのような分別家に見えて心の中は猛々しく、なにかおかしなことが
起こらないようにと、組頭の者たちが暫くは日夜、彼の行動に気をつけていた。
しかしこれでは埒があかないと組頭が年寄衆に泣きつき、吉田に重々意見をしてもらったので、
この件では何事も、起こることはなかったそうだ。
組頭の皆さんも、最後までご苦労様なお話である。
(古郷物語)
895 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2011/09/13(火) 14:13:12.60 ID:e+HuxKfg
黒田の面々はやっぱおかしい
吉田さんは災難だったね…
896 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2011/09/13(火) 14:26:40.46 ID:jpb6mjx7
石垣普請の逸話ってこんなのばっかりだなw
どこもしょっちゅう喧嘩してる
902 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2011/09/13(火) 19:59:08.28 ID:/9LP5Rq5
村田出羽が黒田家の朱槍朱具足か
キチガイって言われるほどじゃなければ認められないものだったのかな
904 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 09:33:07.03 ID:er70wXAS
吉田七左衛門は、吉田壱岐長利の息子の又助こと吉田重成ですな
最初の妻が後藤又兵衛の妹だったり、後妻が毛利秀包の娘だったり、
長政四男の付家老だったり、島原の乱の傷が元で亡くなったりした吉田重成ですね
905 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 19:31:35.38 ID:k/3N0HH4
なら敷き殺しても問題なかったんじゃね
その前に逆切れされて殺し合いになりそうだけど
つーか俺の中で村田出羽のイメージが
ヒャッハーとかギャハハとか跳刀地背拳とかになりつつある
906 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 19:46:36.98 ID:qvRybJjs
村田出羽って若き日の井口兵助でしょ
出奔騒ぎ起こしたこともあるし、このくらいは想定の範囲内かも
907 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 20:08:36.13 ID:6od0IFry
ttp://blog.goo.ne.jp/kuroda-bushi/e/4cc65b95a65d1e11a4d7f74adae8a132
908 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2011/09/14(水) 20:30:37.45 ID:jv5yxqhl
>大坂城天守台の石垣普請の命を受け難なく普請の奉行を勤めた。
・・・難なく?
日本語って難しいなw
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コメント
人間七七四年 | URL | -
大阪城天守閣の下にある残念石はこの普請のときのものかな?
初めて見たときは名前見て噴いたわ
(しかもNGMS隊が運んだって)
( 2011年09月13日 23:36 )
| URL | -
※1
残念石は元和の普請の時だからたぶんこの時のだね。
ただ、あれは小豆島の石切り場で築城には使えないとして残されていたのを
最近になって大阪城に持ってきたんだよなぁ。この話では黒田家は築城用の石を
西宮で切り出してるけど、小豆島でも別に切り出していたのかな。
( 2011年09月13日 23:48 )
人間七七四年 | URL | -
※2
そうみたい。
ttp://www.shodoshima.or.jp/what/zannen.html
( 2011年09月14日 00:03 )
人間七七四年 | URL | -
黒田家はもうなんか…暇しなくて良さそう…だよね…?
( 2011年09月14日 01:11 )
人間七七四年 | URL | -
話し合いで解決できる分、黒田家の方が森家よりは大分理性的ですねw
何で石関連の逸話ってのは、流血もしくは険悪な事が多いのでしょうね?w
重たい物を運んで頭に血でも登ってるのだろうか?
(黒田・森・幽斉・工場長。あと他に有るかな?)
それにしても「関わりたくない」等、時代が違くても組頭達の想いは現代
にも通じる気持ちですね。親近感が湧きますw
( 2011年09月14日 03:23 )
人間七七四年 | URL | -
黒田家ではよくある事
( 2011年09月14日 06:22 )
人間七七四年 | URL | -
現代でも戦国時代でも、マジキチにはまともに相手しても損するだけって事だなw
( 2011年09月14日 07:00 )
人間七七四年 | URL | mQop/nM.
目的を達するためなら何をやってもいいというのは戦国乱世らしい発想だな
( 2011年09月14日 07:30 [Edit] )
人間七七四年 | URL | -
「この件では」ってのが気になる。
( 2011年09月14日 09:02 )
創造力有る名無しさん | URL | -
頭が悪そうに見えて、変に小知恵がまわるのが姫路のDQN。
( 2011年09月14日 19:42 )
名無しのコピペ速報 | URL | -
頭ひき潰してえとかどんな意訳だと思ったら本当に書いてあってワラタww
( 2011年09月24日 21:24 )
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