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藤堂采女の言

2011年11月02日 22:01

366 名前:1/2[sage] 投稿日:2011/11/01(火) 22:50:22.91 ID:3bj1a5Er
七度、あるいは十度主君を変え、満身創痍となって32万石を稼いだ藤堂高虎が世を去り、その子・高次の時代。
藤堂家中は二つに割れ、揺れていた。

そもそもの切っ掛けは、一門家老二人の口論だった。

一人は、藤堂新七良精。高虎の従兄弟で、13歳での初陣以来、藤堂家の大戦全てにおいて功を立て、
高虎の信頼も厚かった新七郎良勝の子である。
もう一人は、藤堂仁右衛門高経。高虎の甥で、湯浅五助との『男の約束』で有名な仁右衛門高刑の子である。

二人は父親の軍功について雑談した事があったが、やがてその優劣を争うようになり、絶交するに至った。

同じく家老の藤堂采女は、昨日は親しく語っていた者が、家老二人の影響で今日は目も合わせぬ現状を憂い、
両派の主だった人を説得して回ったが、日ごろ物静かで、騒動の原因たる両家老の父親たちが命を落とした
大坂夏の陣を生き残った采女の言葉に、耳を傾ける者は少なかった。

そんなある日、新七・仁右衛門を始めとする両派の領袖たちが、采女の屋敷に招かれた。居並ぶ重臣たちを前に、
采女は一礼して召集の辞を述べた。

「やあ、今日は良くお越し下された!お呼び立てした儀は他でもない。貴殿らの父御の、戦功吟味についてよ。」
「采女殿、それは・・・」

「まぁまぁ。そのせいで今や家士たちは、遺恨無き者どもも不通となっておる。これが高じて幕府の耳に届けば、
お家は如何なるや。主君・高次様の御身は、如何なるや?」
「・・・・・・」

367 名前:2/2[sage] 投稿日:2011/11/01(火) 22:52:14.30 ID:3bj1a5Er
「主君の御身を危うくするは、人臣たる者の所業にあらず。また万が一、お家お取り潰しの事態に至れば、
死んでお家を守った父御に、何と言い訳する?主君に対し不忠、亡父に対して不孝、かかる者どもは・・・」

采女の合図で、重臣たちの前に三方が運び込まれた。その上には料理ではなく、短刀が乗っていた。

「死ね。
不忠・不孝の者、ただ今切腹あるべし。下らぬ騒動の末に死ぬよりはマシじゃろう。『こんな犬死には嫌だ』
と思うなら、忠孝の道に立ち返りて、双方相和するべし。

どうあっても忠孝をも顧みず、我意を立て続けるとあらば、止むを得まい。それがしが切腹の手本を仕る。
貴殿らの父御に死に遅れたる我が身、何の惜しい事があろうか。」

そう言って諸肌脱いだ采女の気迫に押された一同だったが、やがて仁右衛門が新七に向けて口を開いた。

「采女殿の言、もっともなり。ここで我らが切腹して男の一分を立て、幕府への言い訳が出来たとて、
また父の戦功を言い立てる者が出れば、同じ騒動が起きよう。ここは和議すべし、と思うが如何かな?」
「うむ。異議なし!!」

こうして、和解の証として仁右衛門の娘が新七のもとに嫁ぐ事が決まり、騒動は収まった。
人々は、ひとり大見得を切ってお家の危機を救った采女について『戦場での討死ににも倍する功』と噂した。
(明良洪範より)

藤堂采女元則。大坂夏の陣の際は、井伊家の陣へ使い番に出ていたところ、木村重成隊の襲撃を受けた。
ところが采女は、あわてず騒がず井伊家に混じってこれに反撃したばかりか、首級を挙げて
井伊直孝の賞賛を受け、褒美まで授かったという。





368 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2011/11/01(火) 23:13:24.03 ID:3gLbEqCv
采女って地名が地元にあるんだが何か関係あるのかな?

369 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2011/11/01(火) 23:17:26.62 ID:R8ebT6iE
>>368
「采女」は東百官(架空官位)の一つだから、結構いろんな所で使われてる、

370 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2011/11/02(水) 00:36:42.93 ID:kluphEUF
男子の名乗りが「采女」ってどうなんやろ
って感覚は当時なかったんだろうな

371 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2011/11/02(水) 00:38:40.45 ID:pWv6enYO
最近見た「一命」って映画は、男なのに求女(もとめ)って名前だったな
でも采女の方は官位名だし、特に気にしなさそうだけど

372 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2011/11/02(水) 00:39:40.72 ID:kluphEUF
采女司はちゃんと存在するから東百官ではないか
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コメント

  1. 名無しさん | URL | -

    老女かと思って途中まで脳内再生してた……

  2. 人間七七四年 | URL | -

    釆女って官職もしかしてマイナー?

    朝廷というか、天皇の身の回りを世話する女官のまとめ役だったはずだけど。

  3. 人間七七四年 | URL | -

    最上の家も家臣がまとまっていればなあ

  4. 人間七七四年 | URL | -

    飛鳥奈良時代が好きな人でなきゃ、采女って知らないだろうなあ
    当時は70年代アイドルばりに神聖かつ超人気だったらしいが
    (憧れの采女が嫁さんになったイィヤッホゥ!っていう和歌があるくらいだし)

  5. 人間七七四年 | URL | -

    短刀を持ってこさせるタイミングとかすごい。
    これは押されるわ。

  6. 人間七七四年 | URL | -

    采女も百官名でしょ。そのうち特に関東でよく使われたものを東百官というらしいが。
    実在する官職の私称や、創作した官職風の名前含めて百官名というのだと思う。

  7. 人間七七四年 | URL | -

    さすが采女!
    良勝に高刑、高虎好きにはたまらんいずれ劣らぬ勇者じゃないか。
    二世らはケンカすんじゃねえよ!

  8. 人間七七四年 | URL | -

    そういやぁ、戸田さんも采女だったな。

  9. 人間七七四年 | URL | -

    *6
    →百官
    「律令官制で官人がたくさんいる」というニュアンスなのではないでしょうか?
    多くの民草→百姓みたいな感じで。
    で、「百官名」という概念があるとすればそれは律令官制に存在する通称ではないでしょうか。

    東百官にはいろいろな伝説が付随していますが(将門が制定したとか……)、
    東国発祥と思われる、律令官制には存在しないが、それっぽい「通称」というものでは?
    やはり東百官はそれっぽいが架空のものではないでしょうか?

    >采女も百官名でしょ。そのうち特に関東でよく使われたものを東百官というらしいが。
    >実在する官職の私称や、創作した官職風の名前含めて百官名というのだと思う。
    と考えられた根拠を後学のために、うかがいたい。

  10. 人間七七四年 | URL | /uHYxkhw

    Wikiだと百官名っていうのは現実に存在する官職を基にして出来た名前で、東百官っていうのは朝廷には存在しない官職風の名前、と云う事らしい。

    たとえば
    采女とか主税とか兵庫とか左近とかは百官名(公家百官)で伊織とか頼母とか兵馬とか左膳とかは東百官(武家百官)になる。

    単純に云うと、百官名は正式に任官していない(だから四等官の部分を省く)名前(つまり僭称)で東百官はなんとなく官職っぽい名前(いわば詐称もしくは偽称)。

  11. 人間七七四年 | URL | -

    藤堂元則は伊賀上忍、服部家の出身で、服部保長の孫に当たる。本人は「服部」姓をを名乗り、一度も「藤堂」姓を使わなかったが、三代目から「藤堂」姓を使っている。
    成程、忍者なのか。

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