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念を入れすぎて害になる

2012年09月08日 20:31

399 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/09/08(土) 10:42:32.28 ID:xlZ/MM+g
ある年の暮れのことである。松平伊豆守(信綱)が将軍家に献上の鱈を仕立てさせ、先ず自身の前に
取り寄せて品物を改めて見ると、なんとその鱈に、ほんの少しだが塵がついていた。伊豆守これを見咎め

「上に捧げるものに、このような粗相をするとはなんと不都合なことか!」
そう担当者をしたたかに叱りつけた。
と、この時たまたま、旗本の井上新左衛門が傍におり、

「伊豆殿、そんなにお叱りなさるな。そもそも鱈というのは、塵のついているものですぞ?」

「井上殿?それはいかなる理由ですか?」

すると井上新左衛門、大真面目な顔をして
「式三番(能の演目)にあるではありませんか、『塵や鱈り鱈り鱈』と謡いるので、
これにより鱈に塵が付いているのは当然のことであります」
(式三番の翁の謡、『とふ くたら里々々ら々りら々里とふ ちりやたら 里々々ら、里ら々り、ら々里とふ 、のもじり)

伊豆守これを聞いて、「また例の、新左衛門殿の滑稽よ」と打笑いつつ
「しかしそうであっても、物には念を入れるに若くはありません。」
と言えば新左衛門

「それは貴殿が御大役を勤められているので、その様にお考えになるのでしょうが、拙者のような
軽い者は余り念を入れすぎると、却って害になることもあるのですよ。」

「ほう?念を入れすぎて害になった例があるのですか?」

これに新左衛門
「大いにあります!昔、唐の玄宗皇帝が楊貴妃との死別を悲しみ、方士に命じてその魂のある所を
尋ねさせました。方士は方々を探し、ついに蓬莱宮で貴妃に会い勅命を伝えれば、貴妃もこれに悲嘆して
私の居る証拠にと、玉の簪を方士に与えました。方士はこれを得てそのまま帰ればその身の害も
なかったというのに、つい念を入れて

『この簪は世に似たものも多くある物ですから、この証拠になり難いかと思います。
貴方様と君との、人知れぬ睦言などがあればお聞かせ下さい。それを証拠として復命したいと
思います。』

これに楊貴妃、それもそうだと思い

『天にあらば願わくば比翼の鳥とならむ、地にあらば願わくば連理の枝とならむ』

との、玄宗皇帝との誓いの言葉を方士に伝えられました。方士はこれを承って立ち返り、
その旨を皇帝に奏上すると、これを聞いた皇帝は

『確かにこの密語は誰も知らないはずだ。これを伝えるからには貴妃に会ったに相違ない。
しかし、これほど他に漏らしたことのない密語を聞いて帰るからには、こいつめ!
貴妃と密通したに相違ない!!」

とて、是非も言わせず忽ちに方士を殺されたとのことです。これぞ念を入れすぎて却って身の害となった
という事ではないでしょうか?」

これに伊豆守、いよいよ大笑いして

「いや実に、その通りです。」

と笑いながら言われたとのことである。
(武士道美譚)




402 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/09/08(土) 10:49:54.68 ID:vpJjED7R
伊豆守笑い杉w

404 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/09/08(土) 11:40:16.66 ID:nDwjHDGO
長恨歌では方士は殺されてなかったような
むしろ玄宗から褒美をもらってなかったか
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コメント

  1. 人間七七四年 | URL | -

    さらりと長恨歌まで出るとは、流石このスレの住民は教養の幅があるね

  2. 人間七七四年 | URL | -

    信綱「ふむ、チリも積もればタラとなる、と(ドヤァ)」
    新左「切れがいまひとつ…いずくんぞ知恵の足らんや」
    信綱「ぐぬぬ」

  3. 人間七七四年 | URL | -

    >404さん
    伊豆守さんを説得するために、井上さんが自分で付け加えた
    のでしょう。
    自分も長恨歌は褒美をもらった話しか知りませんし。

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