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酒井忠世と、神谷与七郎の無礼慮外

2012年11月02日 20:00

194 名前:1/2[sage] 投稿日:2012/11/01(木) 19:55:23.63 ID:wa9MXoK4
徳川家康の新参の家臣に神谷与七郎と言う者がいた。
ある時この神谷が城中で、当時徳川秀忠の老中であった酒井雅楽頭忠世と行きあった。
神谷はすぐに脇によって「キリッ」と礼をしたのだが、その時酒井忠世は考え事をしていたのか、
神谷に全く気が付かず通りすぎてしまった。

スルーされた神谷の心に、暗い焔が灯った

それからというものの、神谷は酒井忠世に出会うたびに無礼慮外を度々繰り返した。小学生かお前は。
ともかくこの神谷の忠世に対する人もなげな振る舞いはよほど話題になったらしく、ついに
家康の耳にまで達した。

「秀忠の重臣に対してなんという振る舞いだ!神谷には暇を出そう!」

そう言ったが、内々に神谷の行状を聞いてみると、彼は人品能く、殊更に奉公を第一に勤めている、
忠世の件がなければ武士の鏡のような男であった。

「ああいった者こそ才能を確かめつつ能く召し使われるべきなのに、ゆえなくお暇を賜るような
事をすれば、御家の諸奉公人たちはどう思うでしょう?我が身を省みて、御家に対し疑いを抱くのでは
ありませんか?
それに雅楽頭(忠世)のせいで神谷があの様なことになった、などと言われては、あの正直至極な
雅楽頭に悪名を付けてしまいます!

しかし、だからといってこのまま放置しおいては御家老の威厳が薄くなり、御家風も軽くなってしまいます。
さて、どうしましょう?」

近臣の者達、結局家康に丸投げする。『相変わらずウチの家中はめんどくさいなあ』と家康は思ったかどうか。
しかしこういう面倒くさい人間を扱わせることに関しては家康はベテランである。
ナイスアイデアを思いついた

「そうだ!今度神谷に知行の折紙(認定証)を与える時、かねてからの約束よりも少し少なめにして
渡そう。神谷はこれまでの情報を総合すると堪え性のない人間だ。ならばその様な目に合えば
きっと自分から暇を願い出るだろう。その場合他の奉公人へも影響を与えなくてすむ。
それにこれで雅楽頭が不評を被る事も無いだろう。よし、これだ!」

そういって家康は、かねての約束が千石の所を、八百石の折紙を用意し一両日中に
神谷に渡す準備を整えた。

と、これを聞きつけやってきたのが酒井忠世である。彼は家康の御前に出ると

「神谷に知行の折紙を下されるという話を聞きました。あの者は殊の外良き奉公人です。
一廉御用にも立つ者でありますから、たしかあの者への知行のお約束は千石でしたが、それよりも
多く与える事こそ然るべきと考えます!」

『またややこしい事に…』家康はきっとそう思っただろう


195 名前:2/2[sage] 投稿日:2012/11/01(木) 19:56:18.18 ID:wa9MXoK4
「いやまて、あの者は殊の外な慮外者であると聞いておる。だから八百石の折紙を既に用意したのだ。」

忠世、これを聞いて怒った
「それは以ての外のお考えです!!
あの者にそんな事をしたら、今後良き奉公人が、どうして御家に仕えることを望むでしょうか!?
ああ言う者をいかにも厚遇してこそ、勇士・能者も集まるというものです。
大御所様!ああもう、散々のご思案ですぞ!!」

家康公ボロクソである。しかし家康
「お前が言うことを一々判断する必要はない。何故かといえば、我が家において、重臣である
お主に慮外するような者はあってはならぬのだ。であるのにあの者は度々に渡りお主に慮外をいたしたと
聞き及んでおる。だからこそ、約束よりも少ない知行の折紙を与えたならばきっと暇を乞うてくるだろう、
その時暇を出してやろうと考えたのだ。そうであるので、知行増など思いもよらぬ!」

家康は個人のことを言っているのではなく、組織の統帥を考えて言っているのである。
これに忠世

「…私は御存知の通り、御家の御厚恩を以って代々召し使われている者ですが、そんな譜代の私に
新参の者が豪胆にも無礼をしてくることに、却ってその器量の深さを感じ、彼を、一廉御用の役に立つ者だと
見立てました。そして内々に調べてみても、人柄・心持ちの揃った人物でありました。
であるからこそ、この様に申し上げているのです!」

家康ももうグッタリしつつ
「…ではお前は、神谷に知行をどれほど与えようというのか?」

「二千石遣わされて然るべき!!」

「!!!???」

倍である。ついでに言えば実際に与えるのは家康である
「た、忠世くん?それなら最初の約束通り千石渡せばいいんじゃ…ないかな~?」
「二千石然るべき!!」
「えーっと、いきなり倍は与え過ぎのような…」
「二千石!」
「…」

家康がどんど追い込まれていくのを他の老中たちがいたたまれなくなったのか、話に割って入り
「じゃ、じゃあ真ん中取って1500石でいかがでしょうか!?そうしましょう!」
と、一同申し上げたことにより、家康も遂に観念し1500石の折紙をつくり、神谷を呼び出し
これを与えた。この時、家康という人の面白いところは、酒井忠世との論争を、残らずありのまま
神谷に伝えた所である。

神谷は感涙を流してこの折紙を頂戴し、城より退出するとその足で酒井忠世の邸宅を訪ね対面し、

「それがし愚かにして人を知らず、憤りを顕したこと、誠に面目のないことでした。」

そう忠世に謝罪したという。
その後神谷与七郎は働きも能く、人品も忠世が見立てた通り、実直に勤め、その後足軽を付けられる程に
出世したそうである。
(武野燭談)




197 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/11/01(木) 20:00:49.01 ID:aYuzkYLw
>>195
国替え後でもめんどくさい三河侍…

198 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/11/01(木) 20:39:37.71 ID:jLOHci8a
やっぱり三河武士はめんどくさい

でもそこがいい

199 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/11/01(木) 20:44:59.37 ID:c293RWN0
忠世がひたすらかっこいい話w

200 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/11/01(木) 22:03:40.61 ID:gJQfI2k2
千石を八百石に、のところでつい反射的に
「まさかケチりたいだけじゃ…」と疑ってしまった自分がいる・・・。

201 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/11/02(金) 00:54:15.29 ID:FUjAttnp
徳川名物三河者コントは実に下らん

202 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2012/11/02(金) 09:20:02.83 ID:UCB2mwtq
家康と忠世による脚本かもな
わざわざ経緯を公にして予定より多く知行することを周囲に納得させ
当人の行為を改めさせるばかりか更なる忠誠をも引き出した
上手く解決したもんだなと感心する
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コメント

  1. 人間七七四年 | URL | -

    結論:相変わらず三河武士はめんどくさい

  2. 人間七七四年 | URL | -

    これで株が上がるのは忠世
    計算通りかな?

  3. 人間七七四年 | URL | -

    忠世は神谷を無視った事に悪気を感じてたのかな
    そうだとしても、素直にそう言わずに回りくどいかばい方をするのが三河武士なんだろうな

  4. 人間七七四年 | URL | -

    これが計算ならわざわざ老中が入ってくる必要ないだろ。
    家康がケチってる事考えると計算とは思えん。

  5. 人間七七四年 | URL | -

    ※4
    家康独裁から幕閣集団指導体制への移行の布石と考えれば、無くもないかと。

  6. 人間七七四年 | URL | -

    家康が神谷を出奔させる気満々なのが意外
    基本的に家中全員めんどくさいから、こんな些細な原因で出奔されたら人がいくらいても足りなくならないか?

  7. 人間七七四年 | URL | -

    >人がいくらいても足りなくならないか?
    どこの東ドイツだよ…wwww

  8. 人間七七四年 | URL | -

    まぁ最後は丸く収まって良かったのでは無いですか?

  9. 人間七七四年 | URL | -

    「で、父上。誰ぞが大御所様に神谷の行状をお伝えしたのですかな?」
    佐渡守「…。(こいつの親の顔みてみたい…)」

  10. 人間七七四年 | URL | -

    これが面倒くさくない連中ならいきなりクビとか出奔で
    取り返しのつかないことになってしまうわけで、
    面倒くさいからこそ大事に至らず話し合いで解決してるんだよな。

  11. やはり三河者はこうでないとな( ̄ー ̄)

  12. 人間七七四年 | URL | -

    ※10
    そもそも面倒くさくなければこんなことはおきなくないかww

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