162 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/01/22(火) 19:19:13.08 ID:e1TzfBPV
江村小備後(親家)といえば、長宗我部家の家臣のうち、その武勇が四国のみならず中国九州まで鳴り響いた、
長宗我部家を代表する豪の者であった。
これはその江村小備後が、13歳の時の事である。
そのころ、江村の近辺では多くの人が失踪する事件があった。
それも、死んで失せるとか、飛んで失せるとか、そういうことではない。座敷の中に皆で集まって居る時に、
立ち上がったわけでも、その場から出て行ったわけでもないのに、かき消すように消えてしまうのだ。
一体どんな化け物の所業なのか。最初は人の目にも見えなかったが、後にはその姿を顕し、あるいは鬼の姿となり、
または女に変じ男に化して、上下を選ばず男女の区別なく、思うままに取り失われたので、
近隣の者たちは貴賎を問わず、申の刻より後(午後5時頃)になると、家の中に人も入れず、外に出ることもなく、
門を閉じてじっと朝を待った。
これに憤ったのが、当時13歳の少年である、江村小備後であった。
「一体何者の仕業であっても、私が住む近辺でこのように不快なことが行われているのを、余所に聞いて暮らすということが
あっていいものか!」
そして或夜、深夜に及んで人が皆寝静まった後、誰も連れず唯一人だけで、西江村の住居を出て、丑寅の方に
向かって歩いていくと、そこに七尺ばかり(約2メートル12センチ)の大法師が、物も言わずに立っていた。
小備後、これこそ話に聞く化け物だ、と思ったが、何事もないような顔をして近づき、すれ違い様!
抜き打ちにはたと斬った!
太刀音高く、手応えあり!倒れる!と見えたが、これも掻き消すように消えてしまった。
その時、小備後は大声を上げた
「化け物を斬ったるぞ!続け者共!!」
近所の者達この声に驚き、手に手に松明を燈してその場に駆けつけてみれば、地面に血が流れているではないか。
この血の跡を追っていくと、遥か北の山に、大きな古い墓の五輪塔が倒れて、空の倫牌が2つに割れ、そこから血が流れていた。
江村の人々は、「このような古石に誑かされ、数多の男女が悩まされたとは、なんと安からぬことであろうか。
さあ、この墳墓を掘り起こし、白骨と五輪を大路にさらすべし!」と評議したが、長宗我部国親がこの話を聞き、
「これは稀代の不思議な出来事である。墓の主はきっと、罪業深く、悪趣に堕した人なのだろう。
誠に憐れなことではないか。」
そう言って石塔を新たに立て、僧を呼んで墓の前で経を読み弔わせた。
この国親の情けが伝わったのだろうか、その後化け物があらわれることはなかったそうである。
そして、江村小備後がこの時化け物を斬った刀は「五輪切り」と名付けられ、後に長宗我部信親に捧げられたという。
(土佐物語)
江村小備後の化け物退治の逸話、そして名刀五輪切りの由来である。
江村小備後(親家)といえば、長宗我部家の家臣のうち、その武勇が四国のみならず中国九州まで鳴り響いた、
長宗我部家を代表する豪の者であった。
これはその江村小備後が、13歳の時の事である。
そのころ、江村の近辺では多くの人が失踪する事件があった。
それも、死んで失せるとか、飛んで失せるとか、そういうことではない。座敷の中に皆で集まって居る時に、
立ち上がったわけでも、その場から出て行ったわけでもないのに、かき消すように消えてしまうのだ。
一体どんな化け物の所業なのか。最初は人の目にも見えなかったが、後にはその姿を顕し、あるいは鬼の姿となり、
または女に変じ男に化して、上下を選ばず男女の区別なく、思うままに取り失われたので、
近隣の者たちは貴賎を問わず、申の刻より後(午後5時頃)になると、家の中に人も入れず、外に出ることもなく、
門を閉じてじっと朝を待った。
これに憤ったのが、当時13歳の少年である、江村小備後であった。
「一体何者の仕業であっても、私が住む近辺でこのように不快なことが行われているのを、余所に聞いて暮らすということが
あっていいものか!」
そして或夜、深夜に及んで人が皆寝静まった後、誰も連れず唯一人だけで、西江村の住居を出て、丑寅の方に
向かって歩いていくと、そこに七尺ばかり(約2メートル12センチ)の大法師が、物も言わずに立っていた。
小備後、これこそ話に聞く化け物だ、と思ったが、何事もないような顔をして近づき、すれ違い様!
抜き打ちにはたと斬った!
太刀音高く、手応えあり!倒れる!と見えたが、これも掻き消すように消えてしまった。
その時、小備後は大声を上げた
「化け物を斬ったるぞ!続け者共!!」
近所の者達この声に驚き、手に手に松明を燈してその場に駆けつけてみれば、地面に血が流れているではないか。
この血の跡を追っていくと、遥か北の山に、大きな古い墓の五輪塔が倒れて、空の倫牌が2つに割れ、そこから血が流れていた。
江村の人々は、「このような古石に誑かされ、数多の男女が悩まされたとは、なんと安からぬことであろうか。
さあ、この墳墓を掘り起こし、白骨と五輪を大路にさらすべし!」と評議したが、長宗我部国親がこの話を聞き、
「これは稀代の不思議な出来事である。墓の主はきっと、罪業深く、悪趣に堕した人なのだろう。
誠に憐れなことではないか。」
そう言って石塔を新たに立て、僧を呼んで墓の前で経を読み弔わせた。
この国親の情けが伝わったのだろうか、その後化け物があらわれることはなかったそうである。
そして、江村小備後がこの時化け物を斬った刀は「五輪切り」と名付けられ、後に長宗我部信親に捧げられたという。
(土佐物語)
江村小備後の化け物退治の逸話、そして名刀五輪切りの由来である。
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コメント
人間七七四年 | URL | -
途中で小備前に間違えたままになってますね
吉田備後重俊の子供で、父親と同じく備後を通称としたので、区別のため江村小備後親家と呼ばれています
なので小備後が正解ですね
( 2013年01月23日 21:48 )
人間七七四年 | URL | -
オリンピックスレイヤー
( 2013年01月23日 22:11 )
まとめ管理人 | URL | wZ.hFnaU
※1
ご指摘ありがとうございます。直しておきましたー
( 2013年01月23日 22:38 [Edit] )
※1 | URL | -
※3
おお!さすがお早いお仕事、感服です!
( 2013年01月24日 00:16 )
人間七七四年 | URL | -
で、結局この消えちゃった人達は助からなかったと言う事なのかな?
若輩者が勇敢にも退治する(or戦働き)物語は、読むとその人となりが
感じられますね。
この「小」の文字の読みは、「しょう」「こ」どちらでしょうか?
結構歴史上出てくる読みなのですが、詳しいルビが振られて無いので
、どなたかお願いします。
( 2013年01月24日 07:55 )
人間七七四年 | URL | -
※5
マイナー
( 2013年01月24日 09:59 )
人間七七四年 | URL | -
これは年貢払えなくて夜逃げした世帯が沢山出たので夜逃げの主導者を化物という事にして始末して、村の長老達と役人が手打ちしたって話でしょ?
( 2013年01月24日 13:48 )
人間七七四年 | URL | -
※5
小文吾(こぶんご)
小五郎(こごろう)
小十郎(こじゅうろう)
だから、普通にこびんごじゃないの?
( 2013年01月24日 19:34 )
人間七七四年 | URL | -
これってもし国親が弔ってなかったらもっとひどい話になってそうだな
( 2013年01月24日 20:12 )
七篠権兵衛 | URL | -
小備後クソかっけえ……
これを期にもっと長宗我部家臣の逸話が増えたら嬉しいですね
( 2013年01月24日 20:15 )
人間七七四年 | URL | -
へ~小ってマイナーて読むんだ?知らなかったわw
( 2013年01月26日 16:04 )
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