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槿花の宮の事

2013年01月29日 19:51

333 名前:1/2[sage] 投稿日:2013/01/29(火) 18:39:16.52 ID:QkWcQkiV
槿花の宮の事

長宗我部元親が仁井田を巡見し、堂原に至った所に、槿花の宮という祠が有った。
元親は、これは聞いたこともない祠だと思い、現地の老人を召し寄せその縁起を尋ねた。
老人が畏まって申し上げるには

「この宮については、不思議な物語があります。

志和の城主和泉守の息女は、容色無双の美人でありました。これを西原藤兵衛重介が娶り、
比翼の語らい(いつも寄り添って語り合っていること)の夫婦仲であったのだが、
ある時この妻女が藤兵衛に涙とともに語った
「私には悩ましいことがあります。どうか暇を与えてください!」

藤兵衛は驚き
「これは心得ぬことを。私はお前と、二世までとも思っているのに。さては他の誰かに想いを寄せているのか!?」
これに妻女、涙をこぼし
「申すも恥ずかしいことですが、申さねばお疑いなさるでしょう。
実は、夜な夜な私の寝室に通って来る者があります。どこから来たとも知れず、又如何なる者とも知れず、
夢ともなく現ともなく忍び入ってくるのです。

初めの頃は私もこれを拒みました。しかしついにこれに従い、終夜語らい、この者が帰ったと解ると、
夢が覚めたようになるのです。

始めは、これは夢だと思いました。しかし彼は一夜も欠けることなく現れ、生臭い移り香も感じました。

一体どんな化生の仕業でしょう?わたしは、心ならぬ事とは言いながら、あなたと二世を約束したのに、
このような浅ましいことになってしまいました。
どうかお暇を下さり、私は急いで里に帰ります。とにかくもそうしないと…」
そう、声を上げて泣いた。

しかし藤兵衛はこれを聞いて呆れながら
「一体何を言っているのだ?お前は私と枕を並べて寝ているではないか。それなのに
私が知らないのだから、それは夢に違いない。
そんな夢で、私がどうしてお前を厭う事があるだろうか?そのような事を気にしないように。」
と、苦笑しつつ言った。

だが一方で『もしかして、浮気をしていて私を欺いているのだろうか?いや、不思議のこともあるものだ』
と思い、様々な祈祷をし、憑物落としなどもしたが、妻女はただ、物思いに沈む体であった。

大永七年(1527)三月二十二日、未の刻(午後2時頃)の事である。

妻女は藤兵衛に向かい、世の中の儚い事などを語っていたが、何気なく、ふと立ち上がり、縁の方に
行くかと思えば、庭の梢の上を、まるで平地を行くように歩いて、塀の上にたった。

藤兵衛は突然のことに驚き駆け寄って、彼女を引き止めようとしたが、妻女は
「藤兵衛殿、さらば!」
と言って塀から飛び降りると、はたひろ(約4メートル)ばかりの大蛇となって、淵の中に入っていった。

不思議というのも愚かなことである。下女や端女達は大いに恐れて逃げまわり、藤兵衛は、
妻女がこのような事になったのを見ても、どうしても彼女を名残惜しく思い、途方に暮れて嘆いていた。

そうして、しばらく経った頃の事

あの妻女の父である和泉守が常に召し使っていた次郎介という下部(卑役の雑人)が草刈りに出て、
その川上で鎌を落とした。あたりを見ても見つからず、草を分けて探していると、気がつけば
広々とした野に出た。四方を見渡してみても、全く見慣れぬ場所で、帰る道も解らず、仕方なく
足に任せて歩いていると、そこに大きな築地塀があった。

そして大きな門を始め、中の家も結構と言うばかりの立派な作りである。
門の中を覗いてみると、人一人もおらず、思わず奥に入ってみると、そこに一人の女性が機を織っていた。

334 名前:2/2[sage] 投稿日:2013/01/29(火) 18:39:54.32 ID:QkWcQkiV
そして彼の方を振り向き「それなるは次郎介か?」と声をかけた。
次郎介は驚いた。それはあの、藤兵衛の妻女だったのである。

「ど、どうしてこんな所にいらっしゃるのですか!?姫君が行方不明になって以来、ご両親様のお嘆きは
言葉で表すことも出来ないほどでした!そして御母上君は終に嘆きのあまりお亡くなりになり、
御父上君も嘆きに身体を崩され、今はお命も危ういように見えます。

姫君様!さあそこから出てください!私がお供いたして、帰りましょう!」

妻女はこれを聞くと涙を流しながら
「私がこのようになって後は、我が二親のお嘆きを思って朝暮に悲しく、我ながら浅ましく思っています。
であるが、これは前世からの宿業であるため、仕方のない事なのです。
せめて父君に、このような有様ではあるが、子も多く産んだと言うことも伝えなさい。
少しはお嘆きを安める事も出来るでしょう。
私が再び、人界と交流する事は出来ません。これだけは悲しく思っている。

今日はここの殿も、あびやうし殿といって、ここから二十町ばかり北にあびやうしが淵の主があり、
それへの慰めのため、眷属共をみな引き連れて参られた。よい隙なので、お前にここを見せ、また
今の状況を父君に伝えたいと思い、お前の鎌を取ってここに隠したのです。
お前の鎌はこの機に懸けてあります。これを取って帰り、この有様を詳しく父君に申し上げてください。
絶対に他人には語ってはいけませんよ。」

そう申し渡され、次郎介は
「で、では、お子様達はどこにいらっしゃるのでしょうか?」
と尋ねると、「あそこで昼寝をしています」という。そこでそちらに行って見てみると、
数知れぬほどの小蛇が、うずくまり重なり伏せていた。

次郎介は身の毛がよだったが、何でもないようなふりをして「ど、どうか殿の留守の隙に、
故郷にお帰りください!御供仕ります!」と重ねて申し上げたものの、妻女は涙にむせび
「私もそうしたいが、再び人界に戻ることはならぬのだ。お前は殿の戻らぬ内に、急ぎ帰りなさい!」
と言われ、もはや致し方なく、「又こちらに参ります」と出立すると、妻女は名残惜しげに
見送った。

次郎介が四、五町ばかり歩くと、元の川端に出た。後ろを振り返って見ると、今来た道はどこに行ったのか、
川が流れ草が生い茂り、その跡形も見えなかった。

次郎介はあまりに不思議な事だと思い、友人達に「このような事が有った」と語ったが、
恐ろしさに舌を震わす者も有ったが、「そんな馬鹿なことがあるか」と否定する者も多かった。
と、そんな所に次郎介は、にわかに物怪のように踊り狂い

『人に語るなと言いしものを、悪い奴かな!我が棲家へ連れて行くなり!』

と大声で叫び、その夜行方知れずとなった。

西原藤兵衛はこの話を聞いて
「わが妻女が蛇道へ落ちたとは、なんと嘆かわしいことだろう。一体どういう業因なのだろうか。
せめてその苦しみを助けてやりたい。」
そう思われ、この祠を建てられ、槿花の宮と名付けられました。なんといじらしい心でしょうか。

西原藤兵衛は深く嘆きましたが、間もなく空しくなり、子も無かったためその跡も絶え、城には住人も
おりません。妻女の父和泉守は、悲しみに耐えず、志和の里に天神の宮があったため、一社に祀りこめて、
北野の天神、今天神など、一社の中に社壇を並べられましたが、後に、妻女が蛇道を免れた事が
新たに御託宣あり、諸人これを承り、有難きことと肝に銘じたのであります。」

長宗我部元親はこれを聞くと「そうであるなら西原の城を見よう」と立ち入り一見した。
この城は山の尾先、屏風のような切崖の上に塀をかけており、下は鵜の巣の淵といって、
深いこと限りなく、その藍の水の色からは、大蛇が住んでいるというのも偽りではないと感じさせた。

こうして元親は高岡郡の城々への仕置の下知を完了し、岡豊へと帰られた。
(土佐物語)




335 名前:人間七七四年[] 投稿日:2013/01/29(火) 22:31:42.54 ID:HfG/u7B+
獣姦NTRとはまた高度な・・・・・・

336 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/01/29(火) 23:35:31.62 ID:gJtbY3kA
しかもヌラヌラした爬虫類
蛇×美女とかいくらなんでもマニアックすぎでしょう

337 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/01/29(火) 23:37:09.82 ID:2atgh01A
古事記における倭迹迹日百襲媛命からの日本の伝統

341 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/01/30(水) 00:58:35.08 ID:1VXwlu3Z
大陸なら蛇女と人間の男の組み合わせもある
蛇女は陰の気が強いから男は死ぬか瀕死化になるけど

狐なら、孫だとされている栗林義長がおるね

342 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/01/30(水) 01:06:40.00 ID:dNqXk2JW
時代はズレるけど、
安倍晴明も妖狐・葛の葉が母親という説もあるね

348 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/01/30(水) 15:50:50.19 ID:kVgfvNS6
>>336
蛇の手触りはサラサラだよ
ヌラヌラは両生類、蛙や山椒魚のたぐいかと
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コメント

  1. 人間七七四年 | URL | -

    嫁を蛇に寝取られたのか

  2. 人間七七四年 | URL | -

    日本昔話

  3. 人間七七四年 | URL | -

    こういう類いの異類婚姻譚って別に珍しいもんじゃないよな
    世界各地、どこでもある気がする
    やっぱり、どこかにアーキタイプの神話があるんだろか

  4. 人間七七四年 | URL | -

    しかし四国は異様なほど怪談が多いな

  5. 人間七七四年 | URL | -

    書き方が上手かったせいか?日本昔話を思い浮かべる逸話でしたね。

  6. 人間七七四年 | URL | 0tR8pBJg

    由布惟信「人間男×蛇女だと最終的には蛇が生まれるそうですよ。」
    佐伯惟教「蛇男×人間女でよかったなあ。」
    緒方惟栄「まったくだ。」

  7. 人間七七四年 | URL | -

    神話ってそういうもんだけど
    オチが無くて何が言いたいのか全く分からんな…

  8. 人間七七四年 | URL | -

    蛇は敵対勢力の比喩かな
    箝口令には従えという教訓も含まれているような

  9. 人間七七四年 | URL | -

    確か遠野物語にソックリな話があったな。
    俺は遠野の方を読んだ時、西洋の『泉の女神』の話(貴方が落としたのは金の斧ですか?銀の斧ですか?ってヤツ)との類似性から、
    泉の女神の話が東北地方に伝わり変形したんだと思っていたが、どうやらこの長曽我部の話が本家らしい。
    ちなみに遠野の方はもっとソフトでコミカルな話。だいたいこんな感じ↓
    まず庄屋の一人娘が死ぬ。数年後、賭け事好きで貧乏な木こりが庄屋の依頼で山の木を切り出しに行く。
    この木こり、貧乏過ぎて斧まで庄屋からの借り物。それを沢に落としてしまう。
    斧を探して沢を下っていくと見た事の無い大屋敷を見つける。
    中を覗くと軒先に庄屋の斧があったので回収。一応、屋敷の人に挨拶しようと屋内に入れると、台所にいたのは庄屋の一人娘だった。
    木こりが驚いて事情を聞くと「私は実は死んだのではなく、山神に見初められてその嫁となったのだ。
    今日たまたま久し振りに実家の物(斧)が近くにきたので、懐かしくてツイ持ってきてしまった。
    オマエが斧が無いと困るのなら仕方ない、持ち帰っても良いが決して私の事を他人に話してはならない。
    話さなければ我が夫に頼み、オマエに幸運を授けよう」
    木こりはこの話を誰にも言わずにいると、賭け事に必ず勝つ様になり、働かずして庄屋をも超える大金持ちとなった。
    周りの者達が不思議に思い、ある時、木こりに大酒を飲ませて酔わせ、この話を聞き出した。
    一人娘が生きていると知った庄屋は喜び、大勢の人を雇って山中を探させたが、ついに屋敷は見つからず、
    木こりも賭け事に全く勝てなくなり没落した。どっとはらい。

  10. 人間七七四年 | URL | -

    蛇女って言うと、自分は安珍清姫伝説思い出した

    伝説自体は戦国以前の話だけど、それ由来の鐘繋がりで、微妙に長宗我部とも因縁の深い仙石との話もあった筈だし

  11. 人間七七四年 | URL | -

    これが美濃だとか関東だとか薩摩だとかなら、激昂した陸戦型モンスターな亭主に蛇神が口から真っ二つに引き裂かれるんじゃないか?って思えちゃうのが戦国クオリティw

  12. 人間七七四年 | URL | -

    鬼武蔵「ついでだからおいしく頂きました」

  13. 人間七七四年 | URL | -

    権現様「食うなよ…」

  14. 人間七七四年 | URL | LkZag.iM

    >>341
    たしか雨月物語にあったな
    蛇女に言い寄られて死にそうになるやつ

  15. 人間七七四年 | URL | -

    吉野裕子って人が昔は蛇を神として祀ってた信仰があったんじゃないかって書いてるね

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