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木食上人が高野山の長吏となった経緯

2013年04月27日 19:51

126 名前:1/2[sage] 投稿日:2013/04/26(金) 20:05:43.28 ID:8ddZDRGH
その頃秀吉公の御治世となり、高野山には秀吉より、御礼に上がるようにとの遣いが送られた。
これに高野山八谷は会合して詮議をした。何故なら秀吉の主君(信長)は高野山の大敵であったので、
今になって騙し寄せて、流刑や死罪を科すのではないかと強い疑いが有ったためである。
高野山ではそこかしこで集まっては、毎日この件を論じたが、自分が行く、という僧は一人も
いなかった。しかしこのまま遅参をしては、直以って不審を被る事になる。どうすべきかと
悩んでいた所に、とある僧がここんな事を言い出した

「私が思うに、近頃高野に上がってきた木食(木食応其)という者がいるが、これを頼んではどうだろう?
彼はよろずの事に学才があり、考え深い者なので、公儀に送っても間違いはしないでしょう。」

これを聞き、僧たちは皆、それが最も良いと考え早速木食を召し寄せた。

ところでこの木食は、近江北部の武士であったが、戦乱により一所懸命の地を離れることになって
世を恨み、それならば高野山に上り木食(木の実や草だけを食べて修行すること)を成して、
往生の素懐を解くべきと思い定め、峠の川で御山の方を伏し拝み

『我、故郷を去って大師を頼み、高野山に上る以上、今後再びこの川を渡らぬ!』

と大願を立てて高野に上ったのである。
かくして柴の庵を結び、木の実を食して経を読み念仏し、また徒然には歌を読み、趣味に
連歌などして光陰を送るほどに、高野の各寺院の僧たちも彼を寺に呼んで、茶を轢かせたり
掃除をさせるなどさて、ここそこで「木食、木食」と召し使っていた。

さて、衆徒会合の桟敷に罷り出て、沓脱ぎのあたりに畏まった木食は「何の御用でしょうか?」と
申し上げると、高野山の長吏が代表して
「ただいま汝を呼び出したのは他でもない、御辺も聞き及んでいるだろうが、殿下様(秀吉)より
高野の老僧に急ぎ御礼に参るようにとの御諚使を下された。ではあるが我らは山僧なので
公儀の儀礼作法など知らない。

一方汝は年頃も丁度良く、また才覚のある人物なので、高野山の代僧となって殿下のもとに
行って頂きたいのだ。これをやり遂げればその後、その方の望みは何であっても叶えて取らすぞ?」

木食承って「皆様がこのようにお頼みになっている以上、拒みがたい事ではありますが、私は
この山に登ろうと決心した時、峠の川において大師に、この度この川を、今生渡るまじきと申し
誓いを立てたのです。ですので当山を降りる事は出来ません。」

僧たちはこれを聞いて「その義は安心してほしい。高野の一山が大師にお詫び申し上げる。
よって罪は些かも御辺に科されることはない。」

これに木食も「そこまで言われては、この上は仕方有りません。」と了承し。大阪へと
参ることと決まる。諸僧は大いに喜んだ。

127 名前:2/2[sage] 投稿日:2013/04/26(金) 20:06:18.05 ID:8ddZDRGH
さて、大阪では秀吉が、高野山からの御礼を待ちかねていた。
「お主は高野山の長吏であるか?」

「左様でございます。木食上人とは愚僧のことでございます。」

木食の事を聞いた秀吉は、彼が木食の修行をしている事を大変殊勝に思い、たいへん機嫌も良く、
そのまま逗留させ高野山の様子を丹念にお尋ねになった。木食は元より文才深厚の人物なので、
秀吉はすっかり彼に魅了され、ついには

「今後は木食上人に高野山の支配を任せ置く!もし異議に及ぶ僧などがあった場合は、
上人の心次第にいかようにも計らいをなされて、無事に治めてほしい。

弘法大師の仕置のごとく、仏法勤行を昔に返し、経学を業とすべし!
甲冑や武具など出家の身に必要ない。早急に点検して没収すべきである!」

この命を受けて木食は大阪を離れることとなった。その際様々な禄を給わったという。

かくして木食上人は大阪より輿に乗り、秀吉より付けられた50人の足軽に守られ高野の麓の
木ノ芽峠まで来るとここで一宿して高野山へと使者を立てた。
『一山、老僧を始めとして一人残らず出迎えに来るように。』

これを見た高野の僧たちは大いに驚き、
「これは一体何事か!?かかる慮外千万の使いを木食はどうして寄越したのだ!?」
と憤慨し評議したが、一方で
「いやいやそのように考えてはならない。殿下様からいかなる事を仰せ付けられたのか測り難いではないか。
まずは言われた通りに行って見るべきであろう。」
この意見に皆もそう思い、老若の僧たち揃って木ノ芽峠に集まった。

そこで木食は座上に座り、彼らに申し渡す

「いかに高野の法師たちよ!今後一山をこの木食が仕置いたす事となった!
仔細は後で山で聴かせるであろう。
僧侶たちよ!この木食の乗っている輿を担いで、私を山に上げよ!」

木食の前後には6,70人の侍があり、僧たちが反抗的な態度をとるのを厳しく制したため、
僧たちは異議に及ばず、各々輿を担いで山へと上ったそうである。

木食はこうして一山の長吏となり、新たに制法を定めた。これにより山も治まり、
つつがなく目出度いことである。
(義殘後覺)

木食上人が高野山の長吏となった経緯である。




128 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/04/26(金) 21:36:07.25 ID:EC1KSH/h
清僧が豹変してしまった悪い話に見えなくも無い

でもこの人が居なかったら高野山の復興は相当遅れただろうしなあ

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コメント

  1. 人間七七四年 | URL | -

    ニコニコ仏の木喰さんと間違えてしまった

  2. 人間七七四年 | URL | -

    昨日まで同格だった奴が、征服してきた奴の命令でいきなり上司になり、横柄な態度を取る・・・
    大名家だったら結構な死亡フラグ

  3. あ | URL | -

    誓いを破ってしまった報いで
    それまでの敬虔な心が失われたとか
    なんかそんなオチがつけれそうな気がせんでもない

  4. 人間七七四年 | URL | -

    君子豹変、小人虎変
    「横柄な態度」とか「敬虔な心が失われた」とかじゃなくて、
    「そうなるべき人」が「そうじゃない状況」にあったのを、
    天の配剤によって「あるべき地位」についたという、
    シンデレラとかと同じ構造の物語でないの?

  5. 人間七七四年 | URL | -

    まぁ元をたどれば、新参者をスケープゴートにした坊主たちがしっぺ返しくらっただけだとも
    血を見ることにならんかっただけマシじゃないかな

  6. 人間七七四年 | URL | -

    「腐敗」していた上層部を苦々しく思っていた、
    木の実や草だけを食べて修行するような清僧が
    権力を握ったら……、やることは粛清に決まってるような気がする。

  7. 人間七七四年 | URL | -

    上層部サークルの誰も傷つかないように、
    サークルに所属していない者を犠牲に差しだすのが
    いいやり方だと思うというのは、いじめの構造に近いと思うけど……、
    どっちに感情移入するかというのはその人の資質に依るのだろうか?
    (僕は木食上人よくやったと思う)

  8. 人間七七四年 | URL | -

    そう振舞いたくなくても振舞う必要があったんじゃないかね
    秀吉は気分屋に見えて緻密な計算もできるから、いったん木食上人に高野山の実権を与えても、後の上人の処置如何ではまた首の挿げ替えで高野山が混乱する可能性があった
    だから秀吉の望むように振舞ったとも考えられるかも……と深読みしてみたり

    まあ私見以上の何ものでもないよねっていう

  9. 人間七七四年 | URL | -

    こういう話が残ってるのは、
    権力を握った男に対する坊主達の嫉妬だろう

    元々はあいつは大した存在ではなかった、と残したかったのだろう

  10. 人間七七四年 | URL | -

    私も一瞬、仏師の木喰かと思った。活躍した時代がまるで違うけどw

  11. 人間七七四年 | URL | -

    高野山を自民党、高僧を森派はじめ各派閥幹部、秀吉を世論、木食を小泉純一郎と代えて読むと趣き深い。

  12. 人間七七四年 | URL | -

    近江人って、考えてみるとこういう人多いよな。

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