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伊達政宗、勧進能にて。伊達家ver.

2013年08月22日 19:51

200 名前:1/2[sage] 投稿日:2013/08/21(水) 20:36:39.94 ID:6zA7awEo
ある時のこと。金剛太夫は江戸は浅草において幕府のお許しを以って勧進能を興行した。
この西国東国の諸大名、大身衆まで江戸に在ったため、各々へ公儀より桟敷を与えられ、見物をされた。

中でも伊達政宗の桟敷は舞台の正面にあり、ひときわ物事キラキラしく飾り付けていた。
その右隣には島津殿、左隣には毛利殿、これ以下大身小身残らずこれに集まったため、桟敷の結構さ、
華麗な御簾、綾羅錦繍の幔幕、八珍の食事も飽き満ちて、見物の諸人も目を驚かせた。

さて、このような中勧進能は行われたが、毎日の能が打ち続く内、太夫も草臥れたのであろう、第5日目の
能は朝から七番行われたが、不出来であったので、見物の者達の心にも響かぬ有り様。大夫の方も
何となく心進まぬ様子であったので、その日の演目が終わり締めの祝言の前に、
伊達政宗が「もう一番するように」所望した。

その時は諸大名は勿論、桟敷、芝居の者達も立ち返ろうという所だったのが、政宗は自ら御簾を上げ言った

「今日の能は何とも心残りの多い出来栄えであったと思う!であるので、もう一番所望をした。
各々、立ち騒がぬよう見物するべし!」

こう宣言したため、皆帰るのをやめそこに留まった。ところが金剛太夫からの返事は

「大変名誉なご所望ではありますが、出来ません(冥加にかないたる仕合にては候へども、罷成るまじき)」

これに政宗、もってのほかに激怒した

「何だと!?私の所望が出来ないだと!!?なんという推参!口惜しきことか!

…成らぬ事というのなら、無理にでも成らせよう。どうしても成らぬと言い張れば、足軽共に
楽屋を取り巻かせ、太夫を始め役者共、全員を撫で斬り(皆殺し)にせよ!

ただし!この返事の憎さ、ただ殺してはならんぞ!なるべく痛めつけて殺せ。
この政宗程の者が望んだことを、かなわずして退くような事があろうか!?一人ひとり首を刎ね、
その後上様にこの事を言上しよう。上様もどうしてこれを非義と思われようか!
政宗は納得しておらぬぞ!」

伊達家中の上下この言葉を聞くや袴のくくりを高くし、すわと言われれば我先に取って掛かろうとの
姿勢を見せ、勇み今にも動き出そうという有り様。「さあ、事が起こったぞ!」と皆色めき立った。

しかし、ここに大慌てで駆けつけたのが江戸の町奉行衆である。彼らは政宗に
「陸奥守殿(政宗)の御意、御尤も至極であります。今日においてあなたの御心に背くような者は
一人もありません。であるのに太夫の返事は言語道断曲事であります!

…で、ご所望に違背申したことの処分に関しては、御前にはお手をかけさせません。私達が
この件については計らいます。町の同心の者達もそのように心得よ!」

そういって騒がしく下知をした。
どうも町奉行、大変なことになる前に、事態を政宗から切り離そうとしたようである。

そうして金剛太夫に事情を聞くと
「出来ないと申し上げたのは、勧進能では、役を勤め終わった役者はそれぞれに帰ってしまいます。
そのため今は皆帰り、残っているのは最期の祝言を噺するものばかりという状況です。
ですので、出来ないと申し上げたのです。」

これを聞いた政宗は
「そういう事なら、その理由を最初に言わなかった事が曲事である。また役者共も憎きことなり!
上様より相応な知行が下されているのは、こういう時のためではないか。
私も未だ帰っていない前に、自分の役が終わったからといって帰るなど、奇怪である!
その役者たちを呼び戻せ!道で追いつかないのなら、宿まで行って引き出してこい!」
即座に馬乗りや徒歩衆が、我勝ちに大勢かけ出した。

201 名前:2/2[sage] 投稿日:2013/08/21(水) 20:37:58.30 ID:6zA7awEo
しかし役者が戻るのを待つ間、能の間が伸び、芝居の者達も退屈しているように見えた。
政宗はこれを察すると皆々に

「所望の能、少し支度に時間がかかる。待ち草臥れているだろうが、もう少し待ってほしい!」

と自身で声をかけ、小姓頭を呼び出し

「芝居の者達に酒を振る舞いたいのだが、にわかの事であり直ぐには出来ないだろう。用意出来次第
出すように。」

そう仰せ付けた。しかし流石は政宗の小姓頭である。主人の事をよく把握している彼はこの仰せを聞くや

「御諚であるぞ!振る舞え!」
と小姓衆に申し渡すと、たちまち南都諸白(中世の高級日本酒)の大樽が数をも知れず芝居へと持ち込まれた。
こんな事もあろうかとちゃんと用意していたのである。主人が主人なら小姓頭も小姓頭である。

すると大桶半切りを用意し、樽の蓋をここかしこで打ち砕き、樽のまま持っていくものもあり、
酒を引きかぶって濡れ、着物を絞るものもあり、様々な肴を持ってきて器に盛り付けて出し、
さしもの広い場所であったが、東西の大名小名が寄り合い江戸中の貴賎がこぞり、芝居も人の居所すら
無いように見えた。

政宗は芝居の者達に土器の盃2,3千ほど出したが、それでも足りず、家臣に
「酒さえ汲めるものならなんでも良い、皆出してしまえ!」
と命じたため、梨地に蒔絵した角、金銀を散りばめた重、喰籠、皿鉢の類、手に当たるを幸いに
芝居に向かって投げつけた。そんな事なので芝居の内は大いに興奮し、色のあるものを手に手に持って
酒や肴に飽き満つる様子はもみじ流れる龍田川、吉野初瀬の花盛に嵐を誘うのと異ならない光景で、
桟敷の諸大名は自らの酒宴を差し置いて幔幕を上げさせ

「なんと大層なことだろう。天竺の月蓋長者が八万余人の非人どもに施行を引いたという楽しみも、
これにはどうして勝るだろうか。なんと面白い景色だろう。」

と、暫く感嘆の声は鳴り止まなかった。
しばらくして政宗は御簾を上げ、「お前たち、酒のんで面白いか!?上戸も下戸もこんな慰みは
酒にしくはない。互いに友を呼んで、飲めや飲めや!」と煽り、すでに酔っ払った状況で

「いいか芝居の者共!いま芝居の中に出ているもの、全部お前らにくれてやる!思い思いに取っていけ!」

と言い放った。これに人々は金銀砂子を敷いた数々の道具をそれぞれ取って、喜び興奮すること限りなかった。
この時数が少なければ人と奪いあうような事も起こったのだろうが、そういったことは起こらず、
逆に人々は驚いたという。
酒に目のないものたちは大樽を抱えて、これに過ぎたることはないと喜び持ち帰り、
上下万民、皆興奮の状況で宿へと帰った。

次の日、さしもの広き江戸に道具一つ持たないものはない、とまで言われた。
この事は将軍家の耳に達し、大いに感嘆し
「この頃類いない事である。しかしこういう事は、学んで出来ることではないな。」
と言われたという。
(政宗公御名語集)

伊達政宗、喜多七太夫の勧進能・悪い話
http://iiwarui.blog90.fc2.com/blog-entry-169.html
↑の逸話の、伊達家の側からの記録である。というか、伊達家で記録していたんですねこれw
ともかくも、よくこんなことやったものである。




203 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/08/21(水) 20:59:53.70 ID:XMJHvHeF
政宗はホント生涯政宗だなぁ

204 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/08/21(水) 21:32:30.94 ID:ZvLBiGZU
>>201
>しかしこういう事は、学んで出来ることではないな。
いや、学ばない方がいいと思います

205 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/08/21(水) 22:26:56.27 ID:RzpKoNGh
酒池肉林の類だよなあ
最近で言うならバブルの狂騒とか

206 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/08/21(水) 22:28:13.81 ID:PShcSDRB
大分話が違うな

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コメント

  1. 人間七七四年 | URL | -

    もう一番演らないと皆殺し、とまで言っておきながら結局演ってないんじゃ

  2. 人間七七四年 | URL | -

    本能寺の変直前、安土での能見物の際の、家康との対応の違いを思い起こしてしまった…(信長が梅若太夫にぶちギレそうになったのを、客人の家康が演技を喝采したので、信長も怒りを収めたという)

    どっちも演技は「不出来」だったが、最後は丸く収めたはなしなんだが …

  3. 人間七七四年 | URL | -

    ※2
    そこが苦労人とDQNの反応の違いというべき、なんだろうか…?

    あとちょっと気になったんだけど、文中出てくる『島津殿』『毛利殿』って、島津は悪久でいいとして、毛利の方は秀就なのかな?それとも秀元?

  4. 人間七七四年 | URL | B4ff.1Vc

    なんでこれで諸大名も将軍家も感嘆してるんだよw

  5. 人間七七四年 | URL | -

    ※5
    これが話しに聞いた「政宗なら仕方が無い」かー(感動)
    だったりw

  6. 人間七七四年 | URL | -

    部分的に抜粋(撫で斬りのとことか)していけば
    三歳様の手紙の内容と大差は無い気がする。
    むしろ現場に居た島津と毛利の感想が聞きたいw

  7. 人間七七四年 | URL | -

    MASAMUNE 「殺してしまえホトトギス」

  8. 人間七七四年 | URL | -

    平時に本当に殺しちゃった逸話あまり無いよね、政宗

  9. 人間七七四年 | URL | -

    待ちくたびれてたのも楽しいし
    上下万民喜ぶからこっちの方がいい話じゃね

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