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浅野幸長「大膳よ、必ず沖を通ってはならん」

2013年08月27日 19:52

213 名前:1/2[sage] 投稿日:2013/08/26(月) 20:28:53.20 ID:E86BTfVu
あるとき、浅野幸長は病と称し、江戸に出仕しなかったことがあった。
当時は大名同士が互いの国元へ見舞いに赴く事は禁じられていたのだが、
そんなとき、突然黒田長政が海路より紀州に見舞いに訪れたのである。

城内に通された長政は幸長と終日話をしていたが、夕刻になると長政は
洲本に供船を待たせているのでそろそろ戻らなければならない、と言って帰ろうとした。
ところがこれを聞いた幸長は、

「今日は泊っていった方がいい。ここの湊は見た目と違って中々難しい湊で、
小船でさえすぐに出すのは難しいし、まして夜に大船を出すことなど出来ないのだ。
是非泊っていくといい。見舞いに来た人に怪我などさせてはこちらの外聞が悪い。」

と言って長政を引き留めるので、その夜は人払いして夜通し物語などしていた。

次の日の早朝、茶の湯をした後で長政は出発することになった。
幸長も見送るからと、大船三艘に古老や覚えある侍らを乗せて出てきたのだが、
幸長は長政に自分の家老や物頭らを
「これは何々と申す者、どこそこの戦いで功名を顕した者、あの者は云々…」
と一々紹介してくれるので、長政もまたその者らに一々会釈をしていた。

幸長は川口まで長政を見送り、
この先の見送りには案内人として、小姓上がりの永原大膳を付け、小舟で先導させることにした。
幸長は大膳に、

「大膳よ、必ず沖を通ってはならん。
わしは数年来、松江浜を経由し、加太の田倉崎へ行くようさせているからな。」

と申し付けた。
そして長政と大膳は幸長らと別れ、大膳は言いつけ通りの航路を通り中松江に差し掛かった。
ところがその海域に差し掛かると大波が押し寄せ、それを被った長政の船は水浸しになってしまった。
さらに、船の者たちが騒ぐ間に2つ目の大波まで押し寄せ、それをも被ってしまったのである。
大膳は混乱しながらもどうにか下知して船を出させ、洲本まで長政を送り届け、
長政は礼に刀をやって大膳を帰した。

一方の幸長は川口浜に幕を張り酒宴をしていたが、大膳の船が見えたと聞くと
何やら楽しみそうな様子でその帰りを待った。

214 名前:2/2[sage] 投稿日:2013/08/26(月) 20:30:55.46 ID:E86BTfVu
戻ってきた大膳は一通り送別が済んだ事を報告したが、
それを聞いた幸長は不満な様子で「それだけか?」と尋ねた。
すると大膳は顔を真っ赤にし、ややあってから

「さても今日は迷惑なことでした!
黒田様の船へ大波が二度も流れ込み、黒田様は船屋形の戸を立てていたので
大丈夫だったでしょうが、他の者らは皆ずぶ濡れになり、酷く迷惑いたしました!」

と答えた。
これを聞いた幸長、大いに機嫌が良くなり、

「わしが聞きたかったのはそのことだ。
わしが小姓から取り立て、馬前で役に立とうというお前が、
その程度の事に気がつかない訳がなかったな。

そもそも筑前めが、家康の内意を得ずに見舞いになど来るものか。
この幸長が色々病気だと言って江戸や駿府に行かないので、
様子を見て来いと言われて来ただけの事だ。ただの見舞いのはずがない。

そういうことだから、明日にも幸長を退治せよとなれば、
西国から筑前が、紀州の湊に通じているからと先手となり船で攻めてくるだろう。
そうなると面倒なので、今日は筑前に波を喰らわせ、紀州の湊は中々難しいと筑前に思わせてやったのだ。
これを聞いて西国の奴らは皆怖れるだろう。
そして和泉路から来るには山越えになるから、こちらが勝つのはたやすい。」

と理由を説明し、
「それにしても筑前めの肝を潰してやったわ、満足満足」
と上機嫌で幸長は城に帰ったのであった。

(浅野長政公伝)より


長政、幸長の罠に嵌って酷い目に遭う、というお話。
前半部分で幸長が長政を引き留めたり、長々と家臣を紹介したりと
時間を稼ぐような行動をしているのは、恐らく夜や早朝に帰られると
海が凪いでいて、威力のある大波を喰らわせられないためと思われる。




216 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/08/27(火) 10:12:01.09 ID:Q+yKU0Wp
>213
腹黒っ!NAGAMASA(浅野の方)も宇都宮や九戸でも腹黒い事してたよな。

218 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/08/27(火) 14:14:22.89 ID:sQ4s80q3
>>213
見舞い禁止されてるのに、大して親しくも無いのが来たら警戒するよな

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コメント

  1. 人間七七四年 | URL | -

    そもそも幸長は、なぜ出仕しなかったんだ?
    どうやら仮病っぽいし。

  2. 人間七七四年 | URL | -

    幸長「働いたら負けかなと思ってました」ヽ(*´∀`)ノ

  3. 人間七七四年 | URL | -

    なんという深慮遠謀
    ……単なるイヤがらせに見えないこともないが、それがしの心が汚れているせいでござろう
    きっと、多分

  4. 人間七七四年 | URL | -

    なんか、やけっぱちになってないか?
    紀州和歌山なら才覚次第で豊家と将軍家の間を好きに遊泳できそうだけど。見方によっては藤堂さん並みの期待じゃないの⁇

  5. 人間七七四年 | URL | -

    黒田長政の見舞いに警戒するのはよくわかるが、
    しかしこれじゃただの嫌がらせじゃねーかw

  6. 人間七七四年 | URL | -

    戦国武将って怖いですね。元々の同僚と言える仲の人達がこうやって
    腹の探り合いの様な関係なのですから。にしても、黒田さん災難。

  7. 人間七七四年 | URL | -

    ワロタww

  8. 人間七七四年 | URL | -

    みんないい根性しとるな

  9. 19 | URL | -

    見事な武略にござる!

  10. 人間七七四年 | URL | -

    ラスボスと三郎の有名な逸話でもそうだろ
    雪駄あたっためたか尻に敷いてたか
    改行いやなら言うて

  11. 人間七七四年 | URL | -

    やるな!幸長!www。
    でもこれでNGMSの方でも、何がしか見破ってたら面白いなw。

  12. 人間七七四年 | URL | -

    大膳まで騙すこたないでしょうがw先に言っとけてw

  13. 人間七七四年 | URL | -

    ※12
    敵を騙すにはまず味方から、ではないだろうか。

    永原大膳ってのは間違いなく先に知っていたら素振りで相手にバレると踏んで黙ってたんだろう。秘策なんてのはいかに知ってる人数を減らすかで成功率が上がる。

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