872 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2014/05/02(金) 17:58:21.49 ID:XyY6Ocfd
安見隠岐(元勝)は西国の生まれである。後に前田家に仕えて一万石を領した。
大坂夏の陣の時、前田勢も出陣して城門近くに攻め寄せたところ、城方からも
打って出てきた。城門の前で合戦となり、城方は強く、前田勢は三度追い立てられた。
その度ごとに隠岐一人は一歩も引かずに苦戦した。そのため味方はまた取って返して戦い、
最後にはこの攻口を前田勢は打ち破った。加賀守(前田利常のことか)は、
「この攻口を取り得たのは、本当に隠岐の武功によるものだ」と大いに褒め称えた。
この合戦の時、隠岐は敵兵と組み合って組み敷かれた。危うく見えたところに伴某が駆けて来て
「隠岐! 手助けしてやろうか!」と声をかけた。隠岐は組み敷かれてなお取り合いながら答えて、
「討つとも討たれようとも、これは私の勝負だ! 御身は御身の勝負をなされよ!」と言った。
そのため伴某はそのまま他へ駆けて行ったのだが、「隠岐は下に敷かれているから
働きは自由にならず、最後には討たれるだろう。彼が討たれてしまったならば私はその敵を
討ち取って隠岐の仇を報じよう」と思い、急いで隠岐のもとへ駆けて来たところ、
隠岐は敵の首を取って立ち上がるところだったので、大いに驚き感心したということである。
後年、太平の時代のこと。隠岐は夜分に道路に立って帯刀している者さえ見かければ辻斬りを行い、
白昼にも帯刀の者さえ見かければ喧嘩口論を仕掛け、あるいは傷を負わせ、あるいは斬り殺すなど
荒々しい所行ばかりしたとのことを家老衆が聞き、評議を行うとの内容を隠岐は伝え聞いた。
その日からニ、三日が過ぎて「御用があるので罷り出よ」との使いが来たので、隠岐は、
「さては切腹を仰せ付けられるのであろう。申し渡しは大方、家老衆であろうな。
切腹は主命であるから速やかに行うが、しかしただ一人で死ぬのも面白くない。
家老衆であろうとも、申し渡しなさる人を一人伴いにしよう」と覚悟して殿中へ出た。
刀ははるかに間を隔てて置いたが、指副(指添え。脇指)は腰から放さずに控えていた。
やがて横山山城守が立ち出て書付を取り出し読み上げた。「其の方は先年の大坂陣の折に
抜群な働き…」と読む半ばまでを聞くと、隠岐は腰の指副を取り、後ろの間へ遠く投げて
謹んで仰せ付けを承り、逆らわずに能登国へ流されたということである。
――『明良洪範』
873 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2014/05/02(金) 20:11:54.28 ID:fvb0URI3
おきのとへ渡る侍かぜを絶え
いのちも知らぬ臣の道かな
874 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2014/05/02(金) 23:24:39.29 ID:jU/LHzoB
太平の世では生きられないもののふか
ランボーを思い出したw
875 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2014/05/03(土) 13:18:08.75 ID:eneZePcc
太平を生きる術などシルベスタ
過去の武辺は夢にスタローン
安見隠岐(元勝)は西国の生まれである。後に前田家に仕えて一万石を領した。
大坂夏の陣の時、前田勢も出陣して城門近くに攻め寄せたところ、城方からも
打って出てきた。城門の前で合戦となり、城方は強く、前田勢は三度追い立てられた。
その度ごとに隠岐一人は一歩も引かずに苦戦した。そのため味方はまた取って返して戦い、
最後にはこの攻口を前田勢は打ち破った。加賀守(前田利常のことか)は、
「この攻口を取り得たのは、本当に隠岐の武功によるものだ」と大いに褒め称えた。
この合戦の時、隠岐は敵兵と組み合って組み敷かれた。危うく見えたところに伴某が駆けて来て
「隠岐! 手助けしてやろうか!」と声をかけた。隠岐は組み敷かれてなお取り合いながら答えて、
「討つとも討たれようとも、これは私の勝負だ! 御身は御身の勝負をなされよ!」と言った。
そのため伴某はそのまま他へ駆けて行ったのだが、「隠岐は下に敷かれているから
働きは自由にならず、最後には討たれるだろう。彼が討たれてしまったならば私はその敵を
討ち取って隠岐の仇を報じよう」と思い、急いで隠岐のもとへ駆けて来たところ、
隠岐は敵の首を取って立ち上がるところだったので、大いに驚き感心したということである。
後年、太平の時代のこと。隠岐は夜分に道路に立って帯刀している者さえ見かければ辻斬りを行い、
白昼にも帯刀の者さえ見かければ喧嘩口論を仕掛け、あるいは傷を負わせ、あるいは斬り殺すなど
荒々しい所行ばかりしたとのことを家老衆が聞き、評議を行うとの内容を隠岐は伝え聞いた。
その日からニ、三日が過ぎて「御用があるので罷り出よ」との使いが来たので、隠岐は、
「さては切腹を仰せ付けられるのであろう。申し渡しは大方、家老衆であろうな。
切腹は主命であるから速やかに行うが、しかしただ一人で死ぬのも面白くない。
家老衆であろうとも、申し渡しなさる人を一人伴いにしよう」と覚悟して殿中へ出た。
刀ははるかに間を隔てて置いたが、指副(指添え。脇指)は腰から放さずに控えていた。
やがて横山山城守が立ち出て書付を取り出し読み上げた。「其の方は先年の大坂陣の折に
抜群な働き…」と読む半ばまでを聞くと、隠岐は腰の指副を取り、後ろの間へ遠く投げて
謹んで仰せ付けを承り、逆らわずに能登国へ流されたということである。
――『明良洪範』
873 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2014/05/02(金) 20:11:54.28 ID:fvb0URI3
おきのとへ渡る侍かぜを絶え
いのちも知らぬ臣の道かな
874 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2014/05/02(金) 23:24:39.29 ID:jU/LHzoB
太平の世では生きられないもののふか
ランボーを思い出したw
875 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2014/05/03(土) 13:18:08.75 ID:eneZePcc
太平を生きる術などシルベスタ
過去の武辺は夢にスタローン
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コメント
人間七七四年 | URL | -
鉄砲方の武士が行き成り接近戦やってる時点で可笑しいけど、前半のいかにも
武士って戦いぶりと、その後のDQN具合と大分落差のある逸話ですね。
( 2014年05月02日 19:48 )
人間七七四年 | URL | -
戦時の勇者、平時の迷惑やね。
ランボーみたいな人だ。
( 2014年05月02日 20:47 )
人間七七四年 | URL | ZPZR469g
脇差を放り投げたのは
「自分の武功は武功として認めてもらえたから」
という解釈でいいのかな?
( 2014年05月03日 00:20 [Edit] )
人間七七四年 | URL | -
武功を読み上げてるから切腹申しつけは無いと判断したんだろw
( 2014年05月03日 01:34 )
人間七七四年 | URL | -
家老斬ったら切腹じゃすまないよね?
斬ったらすぐ自分も腹切るってことなんかな。
( 2014年05月03日 09:26 )
人間七七四年 | URL | -
※4
だよなw
※1
武士に対して幻想持ちすぎw
( 2014年05月03日 10:13 )
人間七七四年 | URL | -
※6
そういう変なレス付けると妙な流れになるから止めといた方がいいよ。
( 2014年05月03日 11:57 )
人間七七四年 | URL | -
腕っぷしで出世する→平和になり政治面で優れた人物が家老格に出世→主君が贔屓していると思うようになる→悪行に走る→呼び出される『切腹だろうから家老も道連れにしよう』→主君に過去の武攻を褒められる→我に返る
こんな感じじゃないかね
( 2014年05月03日 17:02 )
人間七七四年 | URL | -
キリングマシーンは、平時には生きられない
( 2014年05月03日 19:11 )
人間七七四年 | URL | -
殺人機械だ!
( 2014年05月03日 23:06 )
人間七七四年 | URL | -
地味に875さんのセンスが素敵なんだが
( 2014年05月15日 13:32 )
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