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是れ、大阪が社稷を失うの第一と成れり

2016年04月13日 15:16

519 名前:1/2[sage] 投稿日:2016/04/13(水) 11:54:58.69 ID:9iw9dGpA
片桐且元が駿府にて幕府との交渉にあたっていた時、大阪においては、「今回は秀頼公の御使者(且元)
ばかりにて淀様からの御使者が無い」と、前々より関東に下った経験があり物馴れた女中三人を下し、
ご機嫌伺いとして江戸駿府の様子を見てくるようにと、大蔵卿局(大野治長母)、二位局淀殿女中頭)、
正栄尼(渡辺糺母)の3人を八月二十三日に出発させた。八月晦日に駿府に到着すると、この三女は
早速片桐且元と対面し、そこから下向の理由を家康側室・阿茶局へと連絡すると、明日登城すべき旨
申し来たため、三女は喜んで用意した。

九月朔日、八つ時(午後2時頃)三女は徳川家康の御前に召し出された。家康は三女の口上を直に聞き、
「秀頼公夫婦、並びに母儀にも恙無く大慶に思う。」と答えた。
三女は謹んで申し上げた
「今度、鐘銘において韓長老が不調法を行ったため御機嫌宜しからず、供養などまで延期を仰せられた事は、
御母子も殊更困惑されています。」
これに対し、家康
「それは世上の聞こえを憚って一段と申し付けたまでの事であり、苦しからず思っておる。」
こう言う家康は機嫌も常と変わらなかったため、三女は大いに喜んで宿舎に帰り、早速飛脚を以って
大阪へ注進。翌日、江戸へと出発した。

そして江戸への御礼を終え、十一日に再び駿府へと戻り阿茶局と対面して江戸の様子を報告した。
阿茶局は御前より下されたという御菓子を贈りながら言った
「今後はあなた方とも、しばしばこの様にお付き合いできますね。ほんとうに嬉しい。」
「…は?どうしてそのように仰るのですか?」

阿茶局は意外そうに
「ご存知ありませんか?しかじかの事により、淀様が関東に下向なさること、片桐且元が大方お請けして、
品川表にて御屋敷の地までも願いの通りに許可されましたから、おっつけ御下向あるでしょう。
その折にはあなた方もお供として同行されるでしょうから、このように申したのです。

さらに且元は本多正信の縁者に仰せ付けられましたし、尚以ってめでたい事です。」

三女は聞くごとに耳驚き、挨拶もそこそこに暇乞いをして、十二日の早朝、駿府を立ち退いて道を急ぎ
遠州浜松の付近で且元に追いついた。三女は先ず万事を知らぬふりをして申した

「かねて案じていたのと違い、大御所の御機嫌も甚だ宜しく、互いに安堵いたしました。」
且元
「そうではない。関東には様々な思惑があって、今回且元には御難題を仰せ出され、私は甚だ迷惑している。」
三女が強いてその訳を尋ねると、且元は三ヶ条の趣き(豊臣家の大阪からの転封、もしくは秀頼の江戸への参勤、
又は淀殿の江戸への下向)を以ってこれを語った。三女は問うた

「この内何れを関東の意に任せるのでしょうか?」

520 名前:2/2[sage] 投稿日:2016/04/13(水) 11:56:09.09 ID:9iw9dGpA
且元は胸中に深慮有りといえども、天下の大事であるからここで軽々しく女に語るべきではないと考え、
あえて「これ皆天下の御大切である。であるが御所替にもまた御参勤にも及ばぬよう、淀様が御下向の儀さえ
御得心あれば、事済むものである。各々帰られれば、この段たって申し上げて欲しい。」と申した。

三女は心に思った。『且元は駿府で既にこの事をお請けし、その上本多正信の縁者になったので、万事関東の意に
叶うよう取り計らうのも当然だ。』そう察すると、先ず「尤もの事です」と同意したふりをして、
そこからいよいよ且元の所存を聞き出そうと同道して上った。近江国土山に宿した夜、且元は三女に申した
「私は去る八月大仏供の延期についての交渉で関東に下り、久しく駿河に逗留していたため、今度の駿府の模様を
板倉伊賀守殿に報告すべきことがある。次の機会にしようとすればまた延びのびになってしまうので、ここから
直に京都に立ち寄り用事を済ませて大阪に下る。あなた方は先に大阪に上られよ。」

こうして三女は土山から直に大阪に登り、九月十九日到着。そして関東のあらまし、また且元の方針を
散々に讒言した。
日頃から関係の悪かった且元の事であるから、三女は言葉を揃へ、中でも正栄尼が申したのは、
「仄かに聞いたことによると、淀様を大御所の御台にもなされるとか。将軍の御台所と御連枝の淀様が
左様な儀は人倫の道にあるまじきこと!これも且元が申し勧めているそうです。その証拠に、淀様が
関東へ下ることが決定すれば品川にて御屋敷地を下さると固く約束なされたとのことです。これは
阿茶局が申していました。その上且元は、君にも伺うこと無く本多佐渡守と縁者に成りました。
これは上を蔑ろにする行為です!」

このように言葉巧みに申し上げると、淀殿も甚だ怒り「私は賤しくも織田信長の姪、浅井備前守長政の娘であり
秀吉にまみえたことさえ常々口惜しく思っていたのに、今関東に人質として下される事思いもよらぬ!
その上家康の妻と成るなど、無念の至りである。秀頼、もし私を関東に下すというのなた、生きて恥を
抱えるより、ここで剣に伏せるにしかず!」そう涙を流して訴えた

秀頼も「母を売って何の面目があるだろうか。それは考えもできないことだ。片桐が登城すれば
その実否を正そう」と発言した。

大野治長、渡辺糺といった奸臣たちは、普段から且元を強く憎んでいたため、折を得たと様々に
讒言を構えた。

是れ、大阪が社稷を失うの第一と成れり。

(慶元記)


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コメント

  1. 名無しさん@ニュース2ch | URL | -

    慶元記の記述が総て正しい訳でもないんだろうが
    且元以外に徳川方へのマトモなチャンネルが無いのが見て取れる逸話だな
    名前も残らないような女性3人を送り出す神経が酷いし、それに家康がマトモに応対すると考えるのも酷い。
    れっきとした武士が承った言葉と女房衆に下された言葉とどちらに重み正当性があるか?ではなく自分達の聞きたい言葉しか信用しない、一種のカルト的な雰囲気が形成されていたんだろうな。
    秀頼の真意がドコに有ったか不明だが、こんな側近しか居ないなら遅かれ早かれ開戦はしてたよな

  2. 人間七七四年 | URL | -

    ※1
    >自分達の聞きたい言葉しか信用しない
    コレ、現代でも末期を迎えた組織や企業がよく陥ってるな

  3. 人間七七四年 | URL | -

    わざわざ離間の計を図る糸口を自分達から作ってくれたんだから、家康と佐渡爺は笑いが止まらなかっただろうな。

  4. 人間七七四年 | URL | -

    二重に使者を出すってのが統率の採れてなさを物語ってて、いかにも危険な感じだな

    阿茶さんや佐渡さんが、そんな付け込むスキを見逃すはずないで…

  5. 人間七七四年 | URL | -

    ※3
    逆に「もうダメだこいつら…」で草も生えない状況だったかもしれぬ

  6. 人間七七四年 | URL | -

    ※1
    おいおい名前も残らないような三女って…めっちゃ有名人だし

  7. 人間七七四年 | URL | -

    徳川サイドとしては、誠実に対応してたら相手側が勝手に分裂したでござる、だったりして・・・

  8. 人間七七四年 | URL | -

    >仄かに聞いたことによると、淀様を大御所の御台にもなされるとか。

    「へうげもの」の豊徳合体(ママ)って、作者の妄想じゃなかったのか

  9. 人間七七四年 | URL | -

    大蔵卿局だよね、この三女云々は
    なんで原典で名前明記されてないかわからんが

  10. 人間七七四年 | URL | -

    且元「是れ、大坂が社畜を失うのを第一と成れり……?」
    正信「もういい、もういいんだ且元、休め」

  11. 人間七七四年 | URL | -

    片桐且元が大阪城焼失の後に病死したのって、確実にこれらのストレスが原因でしょ!

  12. 人間七七四年 | URL | -

    秀吉にまみえたことさえ常々口惜しく思っていたのに

    え、えぇ…

  13. 名無しさん | URL | -

    ※9

    元※の3行目に大蔵卿局と明記されているんだが、
    ソースでは伏せられてるのでせうか?

  14. 人間七七四年 | URL | -

    今でいうと、関東の支社で働いてたら、いきなり本社に呼び戻され、専務に抜擢。しかも不馴れなライバルの同業会社の取引を任された。ということでしょうか。
    一所懸命、不馴れながら外交したら、徳川からはいいように利用され、味方からは逆恨みされ、板挟み。且元の死は「淀と秀頼の祟り」なんて言われてるけど、「やっと肩の荷が降りた」という安堵と今までの過労が蓄積した末という感じでしょうか。
    且元さんには、「ご苦労様でした」と労いたいです。

  15. 人間七七四年 | URL | -

    ※14
    且元は元から官僚武将としての活躍が目立つ人ですから、外交不慣れ等と云う事はない筈です。
    検地・寺社奉行も歴任し、家康から一定の能力認められてる人物が、外交出来ないと云うのは
    ないでしょうね。

  16. 人間七七四年 | URL | -

    ※15
    まぁその能力を認められてる人物をもってしてもどうにもならないような状況だった、って事でしょう。本当過労が原因で亡くなられたとしか思えませんね。
    今更ですが賤ヶ岳7本槍って実は晩年不遇な方多いのでは?

  17. 人間七七四年 | URL | -

    >>賤ヶ岳七本槍
    糟屋・平野「私達、話題にも上りません」

    各人は活躍自体はしたけど、七本槍の呼称自体が秀吉の盛りって感じですからね。

  18. 人間七七四年 | URL | -

    ※17
    君ら、話題にしたくても記録すら残ってないんやもん

  19. 人間七七四年 | URL | -

    連続テレビ小説「冬の陣!」

    片桐冬は週刊誌で連載を持つ中堅漫画家。
    だが事あるごとに師匠である豊臣から呼び出され仕事を手伝わされる。
    編集長の徳川にやめさせてほしいと告げるが「豊臣先生のとこは色々難しいから」という理由でウヤムヤにされる。
    それもそのはず、豊臣は落ち目の元大物漫画家だが、過去の栄光をかさに編集部に無茶ばかり。
    編集が打ち合わせに来ても寄せ付けないので仕方なく冬が間に入って話を通し、
    徳川もそれを知っているため言いづらいことは全て冬に言わせることにしていたのだった。
    ある日豊臣の逆鱗に触れた冬は「利き腕の指を折ってやる」と脅され…

    おっと、妄想が暴走してしまった。

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